11:バリューセット





本日最後の授業は呪文学だった。
雨宮先生の授業。前三人の先生に続き、この先生も穏やかな人。この学校の先生はみんなこういうタイプの人なのかしら?
性格で選んでるとか? うーんそれは判断基準が難しいなぁ。
優しいだけじゃ駄目だろうし、しっかり怒れる人が指導者になるべきだよね。
それにしても、この学校って先生も生徒もグレード高いんですけど。
美形が多いのは嬉しいけれど、私がここにいてもいいのか微妙ー。
でも学費が安い限り出て行く気はないし、頑張って色々なこと学ぼーっと。



「ね! ちょっとそこのっ・・・!」
「そこの女の子ちょっと待ってっ・・・!」
んー? 私のことなんでしょうか? 見渡す限りに有希や麻衣子はいないし、女の先生方もいないしね。
とりあえず振り向きますか。
と、廊下の向こうから走ってくる二人の男の子。
黄色と銀色のネクタイ=ハッフルパフ。しかも見覚えがある二人組み。
黒髪カチューシャ君と茶色の可愛らしい男の子。
あ、今日の一時間目にあった魔法史の授業のときに目が合った二人だ。
と思ったらもう至近距離ですよ。二人とも走ってきたからか少し頬が赤く染まってる。
「ね、えっと、あの、君さ・・・」
「何どもってんだよ。ちゃんと話せって」
茶髪君がカチューシャ君の脇腹を肘でつつく。でも、それって逆効果な気がしなくもないんですけど?
「あ〜だからえーっと・・・」
・・・・・・あはは。ゴメン。慌てるカチューシャ君が結構一生懸命で可愛いんですけど。
「あーもうオマエ使えねー!」
「んなっ・・・! ならオマエが言えよ、上原!」
んー・・・この二人の会話を聞いているのは楽しくていいんだけど、お昼を食べに大広間に行きたいわけだし。
ここは私が仕切ってもいいかしら。
「ハッフルパフの子だよね? 今日の魔法史の時間に目が合った」
「――――――――ッウン! そう!」
「覚えててくれたんだ・・・」
カチューシャ君は何度も首を縦に振って頷き、茶髪君は驚いたような顔をしている。
いや、いくらなんでも覚えてるって。人の顔とか名前とか覚えるのって割と得意だし。
「私これからお昼なんだけど、大広間に向かいながらでもいいかな?」
「あっもう全然平気!」
「俺たちもこれから昼飯だし。その前にさんと少し話とかしてみたくて」
三人して大広間へ向かって歩き出す。その間に二人はお互いにツッコミを入れながら自己紹介をしてくれた。
カチューシャのほうが桜庭雄一郎くんで、茶髪のほうが上原淳くん。
「私は。よろしくね」
なんか既に名前は知ってるみたいだけど、まあ礼儀だし一応名乗っておく。
「女の子って三人だけじゃん? だから早く仲良くなっておきたくってさ」
「確かハッフルパフには麻衣子がいるよね」
「あー上条さん? いるよ、いるいる」
二人はコクコクと頷く。女子は少ないから顔と名前がずいぶんと広がってるみたい。
この分だと学校中の人が私のことを知ってても不思議じゃないかも。
それは困るなぁ。一方的に知られてるっていうのはちょっと気分が悪い。
「今日さー魔法史の授業のときにちゃんと目が合ったから、そのときに名前聞きたかったんだけど、タイミング逃しちゃって」
ポリポリと頬をかく桜庭君は『ちゃん』呼び。
「やっぱ桜庭が今にも寝そうだったからさんも見てたの?」
キラキラとした目の上原君は『さん』呼び。
「・・・うん、実はそう。ほら、ハッフルパフの黒髪の子と長髪の子が寝てたじゃない? だから桜庭君がウトウトし始めたとき、『あー寝ちゃうのかな』って思って見てたんだ」
ごめんねー桜庭君。でも頭がカクカク舟を漕いでいたら嫌でも目に入るって。
「あー藤代と鳴海かぁ。あいつらグッスリ寝てたもんな」
「笠井と設楽が起こそうとしてたけど結局諦めてたしなー」
ふぅん。藤代君と鳴海君、笠井君と設楽君。後で顔と名前を一致させなきゃ。
桜庭君と上原君は年齢相応の子みたい。
この学校は一癖も二癖もある人が多いみたいだから、こういう子がいてくれるとホッとするなー。
うん、いい友達になれるかも。



。モテモテじゃん、ハッフルパフの奴らにナンパされるなんて」
おいしそうなお昼ご飯が並ぶ席につくなり、光宏が楽しそうに笑って話しかけてくる。
桜庭君と上原君と一緒に大広間に来たのを見てたのかな。
「あれってナンパなの?」
「そうなんじゃないの?」
「えーそうなら私、ナンパされたの初めてだよ。うわー初体験ってやつ?」
おどけて言えば多紀や柾輝たちも笑い出すし。ナンパってされたことないからなー。
さ、お昼ご飯を頂きましょう。
「健太郎、そのサンドイッチ中身何だった?」
「スモークサーモンとチーズだよ。こっちはアプリコットジャム」
「じゃあ両方とも取ってくれる?・・・ありがとー」
「あ、小堤君、僕にも取って?」
あぁご飯が美味しい。このサンドイッチもグリーンサラダもデザートのブルーベリーパイまで全て美味。
コックさん、レシピとか教えてくれないかな?孤児院に帰ったらみんなに作ってあげたい。
料理は好きなんだよねー。まぁ当番で作ってるうちにハマリだしたっていうのが本当なんだけど。
食後の紅茶も美味しいし。いい香りだなー蜂蜜とか入れてみようかなー。
「なぁ、これからどうする?」
柾輝が紅茶を飲みながら聞いてくる。・・・・・・柾輝って日本茶のほうが似合うかもしれないね。
「僕はまだ荷物の整理が終わってないから、片付けちゃおうかと思って」
「あー俺もまだ終わってないや」
じゃあ多紀と光宏は荷物整理に決定。
授業が午前中で終わるのって楽でいいけど暇でもあるわね。近くに遊べるところがないとさらに暇かも。
ウィンドウショッピングとかしばらく出来ないんだろうなぁ。
はどうする?」
聞いてくる仁吉に紅茶を飲み干して。
「私は図書館に行ってみようかなーと思って。魔法界のこととか全然知らないから、本とか読んで調べてみようかと」
「あーそれがいいかもな」
だから柾輝には日本茶のほうが似合うって。むしろビールとか日本酒とか。
別に親父っぽいって意味じゃないけど。でも酒を飲んでいる姿が自然と想像できるっていうのはちょっと不自然よね。
あ、翼さんは紅茶がピッタリ。っていうか似合いすぎて笑えないしー。
グリフィンドールの水野君も嬉しそうに紅茶飲んでるなぁ。好きなのかなー。
「図書館って変身術の教室の前とおって動く階段で一階下りて右に行けばつくよね?」
「うん、迷ったら近くの絵画の中の人に聞けばいいよ。夕飯には遅れないでね」
「はーい」
何か多紀と話してるとほのぼのしてくる。いいなぁ本当に癒し系だよ、多紀。
とにかく午後の予定は図書館に決定。
ちゃんと勉強して一般常識くらいは頭の中に入れておこう。
でもマグル(まだ慣れない・・・)の常識も残しておかなきゃ。孤児院に帰ったときに変な目で見られたら困っちゃうし。
難しいわー、マグルと魔法使いの両立って。



って桜庭君と上原君の楽しいトークと美味しすぎるお昼のせいで、当初の目的を忘れてたよ!
有希に考察少年を紹介してもらおうと思ってたのに!!
あーあーあー・・・・・・・・・私としたことが何たる失態。
ま、でもこれからずっと同じ学校にいるわけだし。今度話しかけてみればいいよね。
魔法界の不思議について是非議論したいなぁ。
きっと楽しい話が出来ると思うんだけど。
とにかく午後は図書館、図書館っと。





2002年8月2日