06:友情コロッケ





さっきの怪しい先生は校長先生だったのかー。
アルバス・ダンブルドアだっけ?
イギリスにある本校の校長先生でもあるんだって。
つーことはイギリスと日本を掛け持ちしてるって訳で、それって結構忙しいんじゃないですか?
きっと校内の何処かに本校へと通じる扉があるんだ!
ワーオ! どこでもドアの世界ね! ネコ型ロボット未来に乾杯!



「ねぇ、それ中身なんだった?」
校長先生の一声でテーブルの上に食べ物がわんさかと出てきた。
隣の子が食べてるのは一見コロッケっぽい揚げ物なんだけど、ほらコンクリートの壁といいボロボロの帽子といい見掛けとはまた違った物が多い世界みたいだし?
とりあえず尋ねてみました。
その子はちょっと驚いたみたいだったけど、すぐに細い眼をさらに細めて答えてくれる。
「カニクリームコロッケだよ。取ろうか?」
「あ、お願い。美味しそうだなーって思ってたんだ」
お皿を差し出すと彼は自分の箸の使ってないほうでコロッケを一つ取ってくれる。
礼儀作法の出来てる子だなー。
「ありがとう」
「どういたしまして。僕は杉原多紀っていうんだ。これからよろしくね、さん」
でいいよ。どうぞよろしくー」
二人して微笑み合ってみる。なんかほのぼのした空気が流れるなぁ。
「あー杉原ばっかりズルイって。俺とも話してみようよ、さん」
声をかけてきたのは正面に座ってる少年。黒髪がサラサラだ。羨ましい。
「俺は日生光宏。光宏って呼んで。その代わり俺もって呼んでいい?」
「いいよもちろん」
「俺はマグルと魔法使いのハーフなんだけどさ、はマグル?」
日生君・・・いやいや光宏が聞いてくる。
「そうだよ。だからさっきも帽子が喋るのを見たときとかかなりビックリした」
ちゃんって面白いよね。セクハラって言って組み分け帽子を叩きつけるなんて」
「その割にはマジな顔してたけどな」
杉原君の後に突然振って湧いた声は私の左隣(杉原君とは逆の方)からのもので。
見ればそこにも男の子・・・って女の子は同じ寮にいないんだから当然か。
色黒で黒髪のちょっと見た目が怖い感じの印象を受ける。
「だって乙女に体重聞くなんてセクハラにも程があるし。第一頭の中を全部見られるだなんて知らなかったんだから」
そう言うと色黒の彼は苦笑して、私のお皿にチキンナゲットを三つ投げ入れた。(ついでにバーベキューソースまで取ってくれた!)
「俺は黒川柾輝。柾輝でいいぜ」
「あ、俺は畑六助! よろしくさん!」
黒川・・・じゃなくって柾輝のさらに隣の男の子が顔を出して言ってくる。
あれ? そのドレッドヘアは・・・。
「ねぇ畑君。ひょっとしてあっちに座ってるのって畑君のお兄さんとか?」
私の位置からは少し離れたところにいる同じドレッドの人を示してみた。ネクタイしてるってことは二年生だよね。
「あぁ、アレは俺の兄貴で畑五助っていうんだ」
「じゃあ紛らわしいし、畑君のことも名前で呼んでいい?」
「えっ、あっ、もちろん!」
畑君もとい六助は顔を赤くしてるし、隣では柾輝が面白そうに笑ってるし。
「杉原君も多紀って呼んでいい?」
「うん。僕はちゃんって呼ばせてもらうね」
ちゃん・・・・・・なんて可愛い呼び方。でも多紀にはよく似合ってるかも。
「そちらの二人は? 名前聞いてもいいかな?」
私の斜め前に座ってる二人にも聞いてみた。
こちらもやっぱり男の子。ちくしょー組み分け帽子め! これじゃ男子校に来たみたいじゃないの!
「俺は伊賀仁吉。よろしく」
「俺は小堤健太郎。よろしく、さん」
ふむふむ。髪の短いほうが伊賀君ね。それで長い方が小堤君。
でいいよ。私こそどうぞよろしくー」
その後二人にも名前で呼ぶ許可を貰った。名前のほうが呼びやすいんだよね。孤児院でもみんな名前呼びだったからさ。
以上私を含めて七人が我がレイブンクローの新入生だ。
この細長いテーブルに座ってるのは十一人。ってことは残りの人はみんな先輩ということになるわけで。
短い金髪の人と、背の高い黒髪で目つきの鋭い人。ドレッドの人は六助のお兄さんだって言ってたけど。
・・・・・・・・・あの人は何? あの人も先輩なんでしょうか?
「どうかした? 
光宏が話しかけてくるのに、チェリーパイを飲み込んでから口を開いた。
「ん、あの人も先輩なんだなーって思って」
視線の先には小柄な先輩。しかもかなりの美少女チック! 有希や麻衣子と並んでも何ら遜色ありませんって!
「あ、確かに。ネクタイしてなければ同じ学年だって間違えたかも」
光宏が言うと多紀も少しだけ笑って頷いた。
けれど隣の柾輝はさも可笑しそうに肩を震わせて笑いを堪えている。
「お・・・お前ら、それ、本人の前で言わないほうがいいぜ?」
「黒川、知り合い?」
柾輝は光宏に頷いて見せて、小声で話を続ける。
「あいつ、自分の身長や顔のこと言われるとマジでキレるから。マシンガントーク聞きたくなきゃ止めとけ」
「何話してんの? マサキ」
・・・・・・麗しいお声が聞こえました。
見ればこちらを向いてにこやかなまでの笑みを浮かべていらっしゃる噂の先輩。
うわー可愛い。可愛いけどこの笑顔はとても怖い。西園寺先生と同じようなプレッシャーの与え方をする人だわ。
「別に。我らがレイブンクローの監督生様についてお話をしていただけだぜ?」
「ふーん? まぁいいけどね」
お、割とあっさり引き下がったなー。っていうかそれ以前の問題。
「ね、柾輝。監督生って何?」
「あぁ、それぞれの寮の寮長のことだよ。うちの監督生は今の椎名翼」
椎名翼さん椎名翼さん。覚えておこーっと。まぁあんな美少女モードなら忘れないけど。
「グリフィンドールの監督生が吉田光徳」
柾輝の示した先には赤と金色のネクタイをしている小柄な男の子。あ、その隣にいるのって佐藤さんだ。一緒の寮にはなれなかったなぁ。
「ハッフルパフは渋沢克朗」
次は黄色と銀色のネクタイをした優しい感じの男の人。何か寮長って感じ。頼られてますってなオーラが背中から滲み出てる。
「で、スリザリンが須釜寿樹」
これはまた一段と背の高いお人で。痩せてるから更に背が高く見える。
ってか目が合ったし。ヒラヒラと手を振ってくるし。
そのヒラヒラの相手は誰ですか?私ですか?私なんですか?
・・・・・・ちょっと迷った挙句に手を振り返してみた。振るだけならタダだし。
そしたらニッコリ微笑まれた。あなたのモットーはスマイル0円なんですか?
「黒川って詳しいのな」
「いや別に。ただ翼とかに話は聞いてたから知ってるだけだって。俺自身は日生と一緒でマグルとのハーフだし」
「僕もハーフだよ」
健太郎と柾輝と多紀が仲良く会話してますよー。
あぁなんかこの寮も結構いいかも。
やっぱり日ごろの行いがいいからかな。っとか言ったら組み分け帽子さんに怒られそうだし。
ここは大人しく感謝の意を述べておこう。ありがとう、組み分け帽子さん。



それから食事の後で校長先生の話を聞いて、諸先生方の紹介をしてもらった。
西園寺先生はレイブンクローの寮監でもあるんだって。
美人な先生でなおラッキー。
これから寮に行って本日はこれにてお仕舞い。
「それじゃ行くよ。迷っても知らないから精々必死でついてくるんだね」
・・・・・・・・・椎名さん、口悪いっす。
まぁでも味のある美少年でこれはこれでオッケー。
こうして我々は椎名さんにつき従って、レイブンクローの寮へと向かったのでした。





2002年7月27日