04:美少女ご対面
アウトですか? セーフですか? 判定は選手に甘めでお願いします。
「セーフよ。よく来てくれたわね、ちゃん」
ヨッシャッ! これで当面は帰らなくて済みそうだ!
ありがとうございます、西園寺先生。
「ほら、佐藤君は早く大広間に行きなさい。もうみんな来ているから」
「ハイハーイ。けど、その前に一つええですか?」
佐藤さんは私を見てニパッと笑った。
「嬢ちゃん、名前は?」
あー・・・・・・そう言えば教えてほしいとか言ってたっけ。
どうしよっかなー、あの時は「考えないこともない」って答えただけだから、教えなくてもルール違反じゃないと思うんだけど。
でも佐藤さんは私のためにわざわざ新入生が集合する部屋まで案内して(むしろ引きずってきて)くれたわけだし。
・・・結論。
「です。よろしくお願いしますね、佐藤さん」
「ちゃんか。俺のことはシゲって呼んでや。一緒の寮になれるとええな」
そう言うと佐藤さんはやっぱりニパッと笑って部屋から出て行った。
しかもその際に私の鞄をみんなと同じ場所に置いてくれた。(何ていい人! やっぱり貴方は紳士です!)
で、佐藤さんが出て行ったとなると注目を集めるのは私一人になるわけで。
クルッと振り向けば、もう沢山の人たちが私を見てるし。そんなに見てても芸なんかしませんよー。
あ、橋で一番最初に見た三人組だ。
って、あ―――――っ! 女の子がいるっ! しかも二人も! やったぁっ!!
上機嫌でニコッと笑ってみると、一人は驚いた顔をして、もう一人の子は笑い返してくれた。
あーよかった。やっぱり女の子がいるといないとじゃ違うからねぇ。
学校生活には華が必要だよ、華が。
それにしてもみんな何時まで私のこと見てるわけ?
西園寺先生がパンパンッと手を打ったので、大量の視線がそちらに移った。
「はい、それじゃあ全員揃ったので説明を始めたいと思います」
よし、この間に人数でも数えてみよーっと。
にしても男の子が多いなぁ、約20人くらい。女の子なんてさっきの二人と私で合計三人しかいないじゃん!
確か寮は四つあるって言ってたから・・・単純に考えて全員バラバラかな。
「まず皆さん、ホグワーツ入学おめでとう」
西園寺先生がニッコリ笑っていった。うわー相変わらす美人さんだー。
「新入生歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席に着く前に、皆さんが入る寮を決めなくてはいけません。ホグワーツにいる間は寮生が皆さんの家族のようなものです。共に食事をし、授業を受け、寝るのも寮ということになります。寮は四つあって、グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。ホグワーツにいる間、皆さんのよい行いは自分の所属する寮の得点になりますし、反対に規律違反したときは寮の減点になります。学年末には最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられますから、皆さん頑張って下さいね」
・・・・・・・・・得点制なのかい・・・。
あんまり得意じゃないんだけど・・・。まぁ減点しないように注意しとけばいっか。
「準備が出来たら呼びにきますので、静かに待っていて下さい」
そう言って西園寺先生は出て行ってしまった。
途端にうるさくなるこの場。・・・静かに待つなんて無理みたいですよ、西園寺先生。
でも騒がしいのは嫌いじゃないし、別にいいかな。
なんて思っていたら、なんとさっきの女の子たちが近づいてくるじゃありませんか!
「はじめまして」
「はじめましてー」
肩につく位の黒髪の少女にそう言われて、私も同じように返した。
うわーこの二人も美少女だぁ。この子はすごく可愛いって感じで、もう一人髪の長いほうの子は綺麗って感じ。
三人しかいない女子がこんなに美少女だなんてツイてるね。
「私は小島有希。よろしくね」
ほうほう、可愛い子のほうは小島有希ちゃんかー。美少女は名前まで可愛いね。
「私は上条麻衣子ですわ」
おぉ、綺麗な子のほうはお嬢様だ。美少女は名前までいい響きを持つだなんて羨ましいなぁ。
「私は。女の子って一人かと思ってたけど、二人がいてくれて良かったー」
二人はコクコクと頷いて、
「私も一人かと思ってたの。でも全員合わせて三人っていうのも少なすぎよね」
「先輩は全員男性だって聞きましたわ」
「じゃあ組み分けで一人になったら、その寮で女子は一人になるわけ?」
ちょっと怒ったように小島さんが言うけど、そんな姿も可愛らしい。
あーそう言えばさっきから気になってたことがあるんだよね。
「ね、組み分けってどうやって分けるか知ってる?」
キョトン。音に置き換えるとそんな感じの顔で二人がこっちを見た。
何か変なこと聞いた? ひょっとしてみんな既に知ってることなの? うわ、私ってば流行遅れ?
「あ、ひょっとしてさんてマグル出身?」
「うん、そう。でいいよー。私も有希って呼んでいい?」
「もちろんいいわよ」
「私も麻衣子で構いませんわ」
名前呼びの許可ゲット。美少女を名前で呼べるなんて至極光栄。
「組み分けは帽子を被るの。そうするとその帽子がどこの寮が相応しいかを決めてくれるんだって」
・・・・・・帽子が決める?
その帽子って何? 決めるって何? 決めるってことは思考するってことな訳で、思考するってことはそれに必要な脳がその帽子にあるという訳で。
脳があるということはそれすなわち生物なんじゃないんですか?
すると帽子=生物となり、帽子≠物。世間一般の帽子で定義されるものではないということになる訳ですね?
それとも魔法界では某生物のことを「帽子」と呼ぶのかもしれない。
あぁそっちの方が可能性が高そうだ。うん、そういうことにしておこう。
「相応しいって何か基準でもあるの?」
重ねて聞くと今度は上条さん・・・麻衣子が答えてくれる。
「基準というか、グリフィンドールは勇気のある人、ハッフルパフは努力家の人、レイブンクローは賢い人、スリザリンは意志の強い人が集まると言われていますわ」
「イギリスにある本校とは少し違うんだって」
麻衣子も有希も説明ありがとう。でもその基準からいくと私に相応しい寮ってないような気がするんですけど。・・・気のせい?
別に勇気があるわけじゃないし、努力家なわけじゃないし、賢いわけじゃないし、さらに意思が強いわけじゃない。
うっわ! 私最悪?
寮に入れなかったら廊下で寝泊りとか? それはそれで面白そうだけど。夏場に肝試しとかやってみたいなー。
でもこの学校って西洋のお城みたいだし、肝試しでも出てくるのはドラキュラとかフランケンシュタインとかの方が似合ってる。
地下室とかに拷問室とかないのかな?あるなら是非見せて下さい。
「一緒の寮になれるといいわね。女子一人なんて寂しいし」
「そうだね」
「そうですわね」
話がまとまった所で見計らったかのようなタイミングで西園寺先生が戻ってきた。
「それでは皆さん、ついて来て下さい」
ゾロゾロとみんなが西園寺先生の後についていくので、私は一番最後にドアを閉めてその部屋を出た。
後ろから見てるとみんなそれなりに緊張してるみたいで面白い。
一番背が低い男の子は「困ってるんです!」って顔してるし、一番背の高いっぽい長髪の男の子は必死で隣の男の子に話しかけてるし。
それぞれの反応に性格が出てて面白いなー。
「、緊張していませんの?」
隣の麻衣子も緊張してるみたいで、少し青ざめた顔で聞いてくる。
緊張? 緊張。それはもちろん。
「緊張してるよー。でも楽しみの方が大きくって」
そう言ったら麻衣子も有希も笑ってくれた。
うん、やっぱり美少女には笑顔が一番!
西園寺先生が大きな扉をゆっくりと開いて、私たちは大広間へと足を踏み入れた。
2002年7月27日