01:入学は拒否します。
それは春にはまだまだまだまだ早すぎる、ある晴れた日のことでした。
「・・・・・・フクロウ?」
グレーの毛並みが綺麗なフクロウが、私に手紙を運んできたのです。
学校帰りの私の目の前にはフクロウが一匹。
グレーの羽に金色の目。これってフクロウ以外の何物でもないと思うんだけど・・・。
フクロウって夜行性じゃなかったっけ?
今はまだ夕方。フクロウの活動時間にはまだ早いでしょー。
だけどこのフクロウは私の目の前の木の枝に止まったままこちらを見ている。
うーん・・・一度目が合っちゃうとどうしたらいいものか。
まぁいいや、早く帰ろう。今日は夕食の当番じゃないけど、先生のお手伝いをしなっくちゃ。
フクロウを無視したまま私は歩き出した。
と、後ろから。
バサッバサバサバサッ
・・・・・・フクロウがついてくる。
何これ新手のストーカー? 実はこのフクロウは生物じゃなくってラジコンとか? リモコンはどこだよリモコンは。
そんなことを考えていると、背負っていたランドセルがズシッと重くなった。
イヤーな予感。
このまま無視して歩くっていうのもいいんだけど、道行く人に変な目で見られそうだし・・・。
ゆっくりゆっくり振り向くと・・・・・・至近距離(鼻先10cm!)に金色の目玉が。
・・・・・・・・・うぉこえぇ! ムチャクチャこえぇぇぇ!!
ギャーッ何? 何なのさ!? ランドセル振り払って叩き落すぞこのフクロウめが!!
爪立てるんじゃないわよっ! このランドセルは卒業したら下の子に回さなくちゃいけないのに!
・・・決めた、振り落としてやる。
実行しようと肩に力を入れたとき、ふと視界の隅にある黄色い紙らしき物が目に入った。
「・・・・・・手紙?」
私が呟くとフクロウは目を細めてホーホーと鳴いた。
あぁフクロウって本当にホーホーって鳴くんだ。っていうかこのフクロウ、私の言葉が分かるわけ?
まぁそれは不思議。テレビ局に売り払わなくちゃ。
「・・・ってそれは置いといて。その手紙、私宛てなの?」
ホーホー
・・・マジでこのフクロウ私の言葉が分かっていやがる。
それとも私が都合よく解釈しているだけかしら? どっちだって別にいいけど。
とにかくこの手紙を開かないことにはこのフクロウがついて回るみたいだし、とりあえず開けるか。
フクロウの足に括り付けられている紐を解き、ペリペリと封を破る。
そして絶句。
「・・・ふふふふふふ・・・・・・この私にケンカ売るとはいい度胸じゃないの・・・!」
親愛なる殿
このたびホグワーツ魔法魔術学校日本校にめでたく入学が許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。
教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。
新学期は四月八日に始まります。
三月一日必着でフクロウ便にてのお返事をお待ちしております。
敬具
日本校副校長 榊孝一
とりあえず、どこから突っ込めばいいものか。
まずこれはって私の名前を名指ししていることから、私個人に向けたイタズラと考えられる。
親愛なるって何よ親愛なるって。私は誰だか知らない怪しい人に愛される覚えなんかないっての。
第一ホグワーツ魔法魔術学校って何? もうちょっとそこのところを詳しく書くべきよね、この手紙。
知り合いに出すならまだしも、全く知らない人に対してあまりに不親切、疑わしいにも程があるわ。
教科書並びに必要な教材のリスト? ・・・あぁこれ?
ローブ、三角帽、怪しい題名の本の数々、杖、大鍋、薬瓶・・・・・・どこで買えっちゅーのよこんなモン!!
新学期は四月八日って、その頃は私も地元の中学校に入学している頃だしー。
フクロウ便ってこのフクロウを使って返事を届けろってこと?
便利ねぇ、ラジコンフクロウは。
んーどうしよう。返事を書くべきか否か。
書かない場合このフクロウはずっとついてくるのかしらね? それも嫌だなぁ。餌与える余裕なんてないっての。
まぁどんな勧誘でもキッチリ断らないと後々面倒なことになるから、返事は書いておきますか。
そこの公園のベンチお借りしまーす。
下ろしたランドセルからノートと筆箱を取り出してっと。
「『親愛なる榊孝一殿。このたびは御校の入学許可を頂けたこと、誠に感謝致します。・・・・・・』」
親愛って愛してなんかいないけどさー。副校長ってことはそれなりの地位にいる人なんだろうし、オジサンでしょ?
金持ちは嫌いじゃないけど、年が離れすぎてるってのはどうだかねぇ。
私個人としては結婚願望はあんまり無いほうだし、むしろ自分でガッポリ稼ぎたいよ。
「・・・とまぁこんな感じでいいかな」
入学しないってことだけはキッパリハッキリ書いておいたし。
知らない人のイタズラに返事を返してあげるなんて、私ってばなんていい子なんだろう!
「それじゃラジコンフクロウ、ちゃんと相手に届けるのよ?」
足に手紙を括り付けて頭を一撫でしてやると、フクロウはやっぱりホーホーと鳴いて夕焼けの空へと羽ばたいていく。
あ、そう言えばあのフクロウをテレビ局に売るって決めてたのに・・・ってヤバイ! こんな時間じゃん!!
あーもうやっぱりあんなイタズラなんかに付き合わなければ良かった!
さっさと家に帰らなくちゃ!!
ファーストコンタクトはグレーのフクロウと怪しい手紙。
公園を後に走り出したときには、そのことはもうすっかり頭の中から抜け落ちていたんだけど。
まさかその日の夜にセカンドインパクトが訪れようとは、さすがの私でも思っていなかったわ。
全く、なんて唐突に行動を起こすヤツラなの!
魔法界の存在を知ったのはその日。
小学校の卒業式を一ヵ月後に控えた、バレンタインデーのことでした。
2002年7月27日