触れてくる手は、首を絞めるように強く
囁いてくる声は、罵るよりも激しく
捧げられる愛は、蝕むほど狂おしく
俺を、殺した
僕は世界にキスをする
01.She said, "You are a disqualification."
目が覚めたとき、の目に映ったのは真っ白な天井だった。
無機質なタイルではない。温かみのある壁紙。だけど見たことはない。
身体を起こせば自分がベッドに横になっていたことを知る。だが、そのベッドも、カーテンも、家具も、何もかも。
すべてが初めて見るものだった。おそらくと同じ年くらいの、子供の部屋なのだろう。雰囲気でそう悟る。
けれど自分の部屋でもないここに、何故自分がいるのか。それが判らなくては眉を顰めた。
床に足を着け、立ち上がる。触れたフローリングが少し冷たくて早足になる。
部屋を出れば短い廊下があり、この家がマンションであることを知った。やはり自分の家ではないことも。
訝しく思いながら、おそらくリビングに通じるだろうドアを開く。
目の前に広がったのは、やはり知らない部屋だった。ソファーもテレビも、ダイニングのテーブルセットも、何もかもが知らないもので。
その中で一人立っている人間にも、全く覚えがなかった。
「あぁ、起きたの」
振り返る際に、茶色の髪が揺れる。背の高い女。整った顔は綺麗と称されるかもしれない。
自分より10は年上だろう彼女は、やはりの知らない人物だった。
「良かった、目が覚めなかったらどうしようかと思ってたの。具合はどう? 苦しいところはない?」
「・・・・・・あんた、誰だ?」
「私は君の叔母よ。君の母親が、私の姉さん」
「嘘つけ。母さんに家族はいない」
「でも、そういう設定なのよ」
「設定・・・・・・?」
怪しんだの呟きに、女は両腕を開き、迎え入れるようにして笑った。
「おめでとう、くん。君は人生をやり直すことが決まったわ」
そのときに、はようやく気づいた。視界の半分が、やけに暗くなっていることに。
自らの世界の半分が削られていることに、ようやく彼は気づいたのだ。
女は言った。おまえは失格だと。
2006年4月25日