突然の爆音に、は立ち上がった。
壁をいくつか隔てたところから聞こえてくる声。
それを破る喧騒。続く崩壊の音。
建物と床が揺れたことから、四番隊詰め所のどこかしらが破壊されたことを悟る。
同じ部屋にいた卯ノ花烈も静かに立ち上がった。
「行きましょう、
「―――了解」
戦時特令により帯刀している斬魄刀を握り、彼らは瞬時に部屋を出た。





勝手にWJ(BLEACH137話)





「い・・・井上さん!? 何で君が死神と一緒に―――・・・!」
不意に天井が崩れて強面の死神が現れたと思ったら、その背には仲間である少女が乗っていた。
怪我のなさそうな彼女に安堵しながらも、石田は尋ねずにはいられない。
「えっと・・・うーんと・・・いろいろあって?」
「いろいろ・・・・・・」
「・・・・・・無事なら、いい」
石田が呆れ、茶度がたくましい肩をなで下ろすと、織姫も照れたように微笑んだ。
岩鷲は未だに死神の一人と言い争っている。
「・・・・・・更木隊長。さっさとズラかった方がいいんじゃないすか?」
一角が瓦礫の山になってしまった地下牢を見回して言うと、更木も表情を変えずに浅く頷く。
やちるは興味深そうに旅禍である面々を眺めていて。
「おい、てめぇら―――・・・・・・」
行くぞ、と更木が言いかけたとき。



「縛道の四十二・弦嚴」



いきなりの衝撃を感じて、身体が崩れる。
かろうじて堪えた更木以外の面々は、倒れるようにして床に膝をついてしまった。
与えられる負荷に、身体が軋む。
強制的な重力の増大に、部屋に設置されていたベッドが音を立ててひしゃげた。
「誰だ・・・・・・っ」
更木が抗って顔を上げると、ぶち抜いてきた天井の上。
地上である一階に誰かが立っているのが見えた。
黒い死覇装に隊長格の羽織。細い影の女性は四番隊の隊長。
そしてその隣で印を組んでいる男は、更木が初めて見る死神だった。
「おい、刑軍に連絡しとけ。十一番隊の上位官席は造反したってな」
「は、はいっ!」
男が顎だけで指示をすると、了解する声と共に走っていく音が聞こえてくる。
更木はチッと舌打ちをし、男を下から睨み上げた。
鬼道一つで自分を含める九名を束縛することの出来る力。
それは男がただの死神ではないことを示している。
「・・・・・・誰だ、てめぇ」
「裏切り者に名乗る名はない。だけどそこの可愛らしい旅禍にだったら悪くねぇ」
男は軽く言って笑った。
「俺は四番隊副隊長、
彼の二の腕には、花をあしらった腕章がつけられている。



卯ノ花はいつもは穏やかな表情を今は悲しみに染め、階下の面々を見下ろした。
「・・・・・・更木十一番隊長。あなたは旅禍の逃亡を手助けするおつもりですか?」
やわらかく咎めるような声に、更木はにやりと唇を歪めて笑う。
「あぁ、そうだ。そうすりゃまた一護と戦えるからな」
「でしたら、私たちはあなた方を止めなくてはいけません。旅禍をこの救護牢に拘置しておくことが、我々四番隊の責務ですから」
はっきりとそう言う卯ノ花は、すでに覚悟を決めているのか迷いのない表情をしていた。
その強さを更木は少し意外に思い、内心で彼女の人となりを認める。
二人がやり取りしている間に他の四番隊員たちが地下牢へと降りてきて、縛道の範囲外で印を組みだした。
と名乗った男が唱える。
「行くぜ。3・2・1―――・・・」
更木は重力に圧されながらも地を蹴った。
「解!」
「「「縛道の二十七・連衆呪!」」」
のかけていた縛道が解かれ、一瞬だけ重力の負荷が消えた。
そして間を置かずに新たなる術が隊員たちによってかけられる。
だが、更木はその一瞬を逃さずに跳躍した。
織姫は下ろしていたが、やちるはまだ背に乗せている状態で。
縛道を逃れ、地下牢から地上へと飛んだとき。
過ぎる影に気づいてやちるを放り投げ、自らも降ってくる剣をかわした。
斬魄刀を振り抜いた卯ノ花が、音もなく静かに着地する。
やちるは持っていた己の刀を引き寄せ、その柄を握り締めた。
更木は高い身長から卯ノ花を見下ろし、ただ一言告げる。
「・・・・・・本気か」
その言葉に、卯ノ花は微笑んだ。
彼女自身の名を思わせるような、穏やかで綺麗な微笑。
更木はそれに舌打ちせざるを得ない。相手は同じ護廷十三隊の隊長なのだ。
戦ってみたいという思いはもちろんあるが、今はそれよりも戦いたい奴がいる。
だからこうして旅禍にも手を貸してやっているというのに。
更木がそう考えている間にも、卯ノ花は抜いた斬魄刀の刃を慈しむように撫でて。
「―――卯ノ花烈、参ります」
微笑んで、床を蹴った。



「剣ちゃん!」
卯ノ花の攻撃を斬魄刀でいなす更木に、やちるが声をあげる。
しかし近寄ろうとする身体は、目の前に翳された一本の腕によって遮られた。
見上げれば先ほどまで自分たちに縛道をかけていたが立っていて、やちるは反射的に一歩下がって斬魄刀を握る。
「あんたみたいな子供は、正直俺の守備範囲じゃないんだけどな。まぁ、烈に言われちゃ仕方ねぇ」
「・・・・・・・」
「烈を怒らせたあんたたちが悪いんだぜ。旅禍は藍染隊長を殺した第一容疑者だ。そいつらを助けるために、俺たちはあんたたちの怪我を治したわけじゃない」
「そんなの関係ないもん。剣ちゃんが楽しければ、それでいい」
「詰所の壁も床も壊しやがって。大体十一番隊は治療してやっても礼は言わない。それどころか俺たちをお荷物扱いする。挙句の果てには仕事の邪魔か」
「四番隊は弱いんだから当たり前じゃない」
「じゃあ、試すか?」
卯ノ花と同じように、けれど彼女ほど優しくない笑みを浮かべて、が斬魄刀を抜く。
やちるも車輪のついている柄を放り投げ、身の丈の半分ほどもある刀を構えた。
それを見て、は片手の人差し指と中指を立てて、口元へと当てる。
「力だけじゃ勝てないぜ。俺にも―――烈にもな」
言霊を唱えて、突きつけた。
「破道の三十三・蒼火墜!」
爆音が辺りに響き渡る。



身内同士の戦いが、ここでも始められようとしていた。





2004年6月23日