the best days of their life(おまけ)





小半刻後、夕焼けのとある店にて。



「・・・・・・・・・おい、貴様ら」
「何だよ、砕蜂。すいませーん、注文お願いしゃーす」
「甘味屋に行くと私は聞いていた筈だ。それなのに何だ、ここは」
「ぜんざいも酒も似たようなもんだろ?」
「北の誉と浜千鳥、それと超特撰越乃寒梅を。猪口は一つでお願いします」
「ふざけるな。私は帰る」
「何だ、おまえ下戸かよ。じゃあミルクでも飲んでろって。すんませーん、ミルク一つ」
「焼酎を! ・・・・・・瓶で貰おうか」
「そうこなくちゃな。俺はこの前と同じ麦酒。肴も適当に持って来て」
「八海山と正雪を」
「大体、何故制服で入れる飲み屋がある。学院からも近いし教師に見つかるに決まってるだろうが」
「ここの女将と知り合いなんだよ。教師は来ねぇ。最近はもっぱら西流魂街にある妓楼に入りびたりみたいだしな」
「ふん。聖職者が聞いて呆れる。やはり護廷隊に入れない死神が教師になるというのは本当らしいな」
「すみません、龍壽羅生門と雪雀寿を。それと酒呑童子白吟のしずくも」
「言ってやるなよ。『護廷隊に入るような優秀な死神を自分が育ててやった』ってことが奴らの矜持なんだろ」
「くだらぬ。私が護廷隊に入るのは私の実力であって、奴らの尽力など塵一つもないわ」
「感謝してその話を上官にし、そのおかげでいつかは引き抜かれることを夢見てるんだろ。可愛いもんじゃねぇ?」
「黒田城大手門と金冠黒松錦をお願いします」
「他力本願など愚かにも程がある・・・」
「大典白菊備中和醸と若鶴素心、黒松翁を」
「運も実力の内とも言うけどな・・・」
「露しぐれをお願いします」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「三千盛を」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「何か?」



にっこり笑顔で微笑む卯ノ花は、平時の彼女となんら変わらない。
転がっていく数多の空瓶に、砕蜂とは思わず目を逸らしあったのだった。





2005年4月21日