彼らが出会ったのは、偶然だったのか、それとも必然だったのか。
誰にも判らない。けれど彼らは出会ってしまった。
この死神統学院の一組で。
彼らは、出会ってしまった。
矜持があるから、君に触れない。
a three-way deadlock
彼女が静かに歩を進めると、自然と人だかりが割れた。
向けられる視線を一身に受けながら、けれど動揺する様子はない。
穏やかな造作の顔立ちは、その作りに似合った柔らかな笑みを浮かべている。
新しい制服の裾、赤い袴が歩に凪いで。
「・・・・・・卯ノ花烈だ・・・」
小さな声が、ざわめいている周囲から聞こえてきた。
「卯ノ花って、あの主席合格の?」
「へぇ、こいつが・・・・・・」
交わされる言葉のほとんどを耳に入れながら、それでも前を向いて微笑む。
それが、卯ノ花烈。
騒がしい教室内で、前から二列目の席。
そこを中心として遠巻きな円が形成されている。
新しい制服に身を包んだ小柄な姿は、まっすぐに前を向いていた。
強い視線の先は、何を見ているのか。
「・・・・・・あれ、砕蜂だろ・・・?」
同じ教室内、遠くから呟くような声が響く。
「砕蜂って、筆記試験でほぼ満点だった、あの?」
「マジかよ・・・・・・」
囁かれる言葉のほとんどを無視しながら、それでも前を向いて顎を引く。
それが、砕蜂。
迫ってくる拳を軽く交わし、バランスを崩した身体に膝蹴りを叩き込む。
男の潰れたような呻き声と、女の小さな叫び声。
乱れた髪を適当に払い、整った顔で高慢に笑う。
新しい制服の青い袴は、すでに草がついていた。
「俺は」
少年から青年に差し掛かる、容姿と声音で彼は言う。
「自分の女が他の男と寝たからって言い掛かりつけてくんじゃねーよ。問題はてめぇの甲斐性の無さだろ」
軽く笑うと、地を這っている男が顔を歪め、女は肩を震わせた。
「まぁ、俺が魅力的過ぎるのも悪いんだろうけどな」
それだけ言うと興味をなくしたように踵を返し、校舎へと前を向いて歩き出す。
それが、。
この日、彼らは出会ってしまった。
輝ける未来への一歩となる、学び舎の一室で。
これから長くを共にする相手に、出会ってしまった。
それが吉と出るか凶と出るかは、彼ら自身も知らない。
2004年8月3日