セピア





東京に出てきたんは俺の意思や。
もう京都にはおれへん。あないな奴の側なんかにいとうないんや。
ごめんな、おかん。それとおおきに。
東京行くんを許してくれてホンマに嬉しかった。
それと一人で出てきた俺を優しく抱きしめてくれたあの人も。
俺は生涯忘れへん。
この髪の色は俺の生き方への誓いなんや。



「・・・・・・っつ―――――・・・」
呟いた声が校舎の狭間に反響してユラユラ揺れる。
座り込んで背中を預けた壁がひんやりしていて気持ちがええ。
「・・・・・・・・・負けてしもうたなぁ・・・」
自嘲気味な声がちょっとだけ情けない。
勝てるかと思うたんやけどなぁ・・・・・・。
予想よりも河村先輩のパワーが上やったってことか。
まぁええ、過ぎたことは仕方あらへん。
にしても次はあれや、『天才・不二周助』。この人はちょお無理かもなぁ。
体調さえ万全やったら五分の勝負が出来るかもしれへんけど・・・。
ズキリと腹部に痛みが走る。
それと同時に遠くから複数の足音が聞こえ、俺は小さく舌打ちした。
ったく、イヤーな時ばっか狙ってくるんやからなぁ。



「テメーちょっと調子に乗りすぎてんだよ」
ハイそーですか。別にどうでもええけど捻りのない台詞やなぁ。
「第一何だよこの髪の色! こんなことしていいと思ってんのか!?」
思おてますわ。第一思おてなかったらしてへんやろ。変なこと聞く奴やな。
「さっき痛みつけたのにまだわかんねぇのかよ!」
何を判れっちゅーんや、あんたらは。男が5人も6人も集まってヤカマシイにも程があるで。
この髪の色にしたときから絡まれるんは判っとったけど、こうも低レベルの奴らやとええ加減ウンザリするわ。
「何とか言えよテメェ!!」
男のうち一人が殴りつけてきた。しかも顔やで! 顔!
うーわー俺の自慢の顔に傷つけよった。
しかも一人が殴ったことで他の奴らもやる気になっとるし。
あーもーしょーもな。
「あんさんたちは何が望みなん? 俺が髪を黒く染めれば満足なんか? それともこの顔を隠して地味に暮らすことが望みなん?」
そんなこと位じゃ俺の輝きは消せへんけどな。
「・・・・・・悪いんやけど」
一つ呼吸をおいて、奴ら全員を見てニパッと笑うて。
「俺はこの髪を変える気はあらへん。女子にモテるんはしゃあないやろ? 実際俺はカッコええんやから。あんたらもモテたいなら精々努力でもするんやな」
俺の言葉を受けて奴らは顔を怒りに染めて殴りかかってきた。
ホンマのこと言うただけやのに、全くアホやなぁ。
さっきは抵抗もせんと殴られてやったけど、今回はそうはいかへんで?
一人の男の腹を思い切り蹴飛ばし、しゃがんだ頭にカカト落としを食らわせてやった。
よし、一人KO。あとは・・・・・・五人か。
「ほら来ぃや。お望み通り相手したるで?」
俺はメチャメチャ笑顔で手招きをした。



昔からケンカは得意やった。
それは空手や護身術なんかやない、ただ生きるために必要だったんや。
自分の身は自分で守る。
それはいつからか俺の中で揺るぎないルールになっていた。
叩かれたら殴り返せ。
蹴られる前に蹴りつけろ。
誰にも負けない、自分になるんや。



誰にも負けない自分に、なるんや。





2002年11月7日