セピア
「ねえ。ちょっと打ってかない?」
俺がギブアップ宣言をした後、越前とかっていう帽子の奴は金網越しにそんなことを言い出した。
? 誰かいんのか?
気になって覗き込むと柱の影に淡いセピア色の髪が見えた。
あーアイツ、例の噂の奴じゃん。
『セピア色の髪で関西弁を話すカッコカワイイ一年生』だっけか?(クラスの女子談)
へぇなるほど。アイツがそうなのか。
「残念やけどお断りさせてもらうわ。俺、今日ラケット持ってきてへんし」
おお! マジで関西弁だ。生で聞いたの初めてかも。
越前が不服そうに頷くのを見て、俺はそいつらに近づいて話しかける。
「よ! おまえもテニス部に入部すんのか?」
「えーっと、桃城先輩でしたっけ?」
セピア色が俺を見上げて聞いてくる。
「おう、桃ちゃんでいいぜ」
「桃ちゃん先輩・・・・・・うーん長いなぁ。桃先輩でもええですか?」
「おうモチロン」
オッケーだすとセピア色はニパッと笑って。
「俺はっていいます。リョーマと同じクラスなんですわ」
「あー知ってる。美形が二人いるって女子が騒いでたからさ」
俺の言葉に目の前の二人は全く違う反応を示した。
「女ってホントそういう話題好きだよね」
呆れたように言う越前と。
「あーもーいややわぁ。俺が美形なんて当たり前のことですやん。今更おだてたって何も出ては来ませんで?」
笑いながら言う。
コイツラどっちも自分が美形だって認めていやがる・・・・・・・・・。
全く、ホント末恐ろしい一年だな。
「で? もテニス部に入んのか?」
「もちろん入部させてもらいますわ」
やはりニパッと笑って言う。
「へー強いのか? おまえ」
「は強いよ」
答えたのは本人ではなくて越前だった。
しかもえらく断定的に、挑戦的な笑み付で。
ふーん。コイツがそんな風に言うってことはかなりの腕前なんだろうな。
楽しみじゃねぇか。
「ま、実力はおいおい判るってことで。リョーマ、そろそろ帰らへん? 俺、夕食当番やから買い物していかんと」
「分かった。の家ってどっちの方?」
「校門出て右。スーパー『寄ってけ』の近くや」
「じゃあ途中まで一緒だ。待ってて、着替えてくる」
越前はそう言うと荷物の方へ歩いていった。
そして試合を見ていた他の一年や女子生徒に捕まっている。
ん? 待てよ、今の会話・・・・・・・・・?
「おい。おまえ越前と知り合いなんじゃなかったのか?」
「知り合いですよ? 入学式に会ったばっかですけど」
俺を見上げて不思議そうに首を傾げる。
おいおいおいおい・・・・・・入学式ってほんの三日前じゃねーか。
じゃあ何で越前はあんなにハッキリ『は強い』って言ったんだよ。
オマエら試合したことねーんだろ?
「・・・・・・・・・俺と越前は同じタイプの人間だってことですよ」
が呟いた。
え? と思ってそっちを見ると、は笑顔で俺を見ていて。
「ほな俺も失礼しますわ。桃先輩も気をつけだほうがええですよ。捻挫って結構クセになりますから」
・・・・・・・・・・・・・・・コイツも気づいてたのかよ・・・。
の後ろ姿と学ランを着込んだ越前にため息が漏れる。
竜崎先生の言うとおり『スゴイ』っていうのは間違いじゃねーってことか。
負けらんねーな、負けらんねーよ。
2002年8月27日