セピア
・・・・・・・・・・・・全く、何て一年だ。
入学式の終わった後、俺は人並みの多い廊下を歩いていた。
周囲には新しい制服に身を包んだ新入生たちが自分の教室を探して歩いている。
その表情には緊張や喜びが浮かんでいて、二年前の自分もこんな風だったのだろうかと思い返してしまった。
そんな中、前方からこちらへと向かって歩いてくる二人組みが見えた。
小柄な体格の男子生徒。
近づいてくるセピア色に眉を顰める。
・・・・・・・・・・・・・・・染髪は校則違反だ。
「・・・・・・・・・そこの男子生徒」
すれ違いざまに声をかけると、二人組みはくるりと振り返った。
黒髪の方は150cm、セピア色の方はそれより少し高いくらいか。
俺はセピア色の方へと向かって言う。
「髪を染めることは校則違反だ。明日までに落として来い」
セピア色の生徒は驚いたように俺を見て、その後ニパッと笑って自分の髪を指差した。
「いややなぁ旦那。これは地毛ですって」
・・・・・・・・・旦那?
セピア色は関西弁を使うのか。
そしかし言われた内容に俺がさらに眉を顰めると、黒髪の方が呆れたように口を開く。
「。それすっごく嘘っぽい。つーか嘘じゃん」
「うわヒドッ! リョーマまでそないな事言うんか? この髪の色は俺のポリシーやん。滅多なことじゃ変えたらへんで?」
「まあ確かに似合ってるけどね」
リョーマ。
今、セピア色は黒髪の方をそう呼んだ。
成る程、こいつが竜崎先生の言ってた『越前リョーマ』か。
「第一外見で判断する方が間違うとるんや。黒でもセピアでも俺は俺。中身は変わっとらんのやから、それでええやんなぁ」
「日本人はそういうのにウルサイんだってさ。外見が『普通』じゃなければそういうレッテルを貼り付けるんだってウチの親父が言ってた」
「うっわ何やそれ。俺なんかベタベタ貼り付けられてまうやん」
「外見が普通だってヤバイ奴はヤバイのに。全く変な考えだよね」
・・・・・・・・・・・・・・・会話が進んでいく。
「・・・・・・とにかく、染髪は校則違反だ」
俺が再度そう言うと、セピア色はわざとらしく肩を落として首を左右に振った。
「あんさん頭固いなー。校則は破る為にあるんやで?」
「屁理屈を言うな」
「うっわーますますもって頭固いわ。そないな事言うとったら、あんさん将来ハゲてまうで?」
「その眉間のシワもそのまま取れなくなっちゃうかもね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
この二人は・・・・・・・・・・・・!!
「リョーマ。それにも何をしとるんじゃ?」
「・・・・・・竜崎先生」
後ろから声をかけられて振り向くと、不思議そうに俺たちを見ている先生がいた。
「一年生はHRじゃないのかい? ホラ、さっさとお行き」
先生にそう言われて、初めて周囲の一年生たちがいなくなっているのに気づいた。
しかし越前とセピア色(と言ったか?)は慌てる様子もなく頷いて、
「ほな俺ら行きますわ。また会いましょね、先輩」
「今度は笑顔で出迎えてほしいっスね」
・・・・・・・・・・・・廊下を走るのも校則違反だぞ、オマエら。
「手塚、あいつらがどうかしたのかい?」
竜崎先生に尋ねられ、俺は少し口調を濁す。
「いえ・・・・・・という生徒の髪の色について少し・・・・・・」
「ああ、あの色のことかい。あれは入試のときにもかなり問題になったんだよ」
竜崎先生は大きく頷いて先を続ける。
「面接のときもあの髪の色のままで来てねぇ。まあ筆記テストの方では成績トップだったから入学に至ったんだが」
入試でトップ!?
あのセピア色がか・・・・・・?
外見・雰囲気からは想像も出来ない事実に、俺は愕然としてしまった。
「本人にも色々と主張はあるようだし、おまえさんも生徒会長として気になるだろうが、まあ大目に見てやってくれ」
竜崎先生はそう言うと、来た廊下を引き返して去って行った。
と越前リョーマ。
全く・・・・・・とんでもない一年が入ってきたな。
おれはこの先を思って深く深くため息をついてしまった。
・・・・・・・・・・そう言えばあの二人、入学式に出ていなかったんじゃないのか?
セピア色の髪ならいくらなんでも見落とさないだろうし。
あいつら・・・・・・今度会ったときはグラウンド30周だ。
2002年7月18日