セピア





「やばっ! 寝過ごしたっ!」
俺が起きた時すでに周囲に人はなく、その代わりとでも言うように遠くの体育館でピアノと歌声が聞こえてきている。
・・・・・・・・・・・・・・・入学式、始まってるし。
少しだけのつもりだったんだけど、ずいぶん寝てたみたいだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぁ、しょーがないか。
クラスは判ってるし、式が終わったら教室に行けばいいよね。
そう決めてもう一眠りしようと目を閉じたとき、タタタッという軽い足音が耳についた。
「うっわーやってしもたっ! 入学早々遅刻かいっ!」
聞こえてきたのは男にしては少し高めの関西弁。
俺と同じ事してるし・・・とか思って目を開けたら、キラリと眩しい光が目に入った。
陽に透けた金色の髪。
そいつは体育館の方を見て少し考えてたみたいだけど、
「まーええわ。サボるか」
決断早っ!(人の事言えないけど)
「というわけで、一緒してもええ?」
「っ!?」
そいつはパッと俺の方に向きかえってニパッと笑った。
あー何か女子に騒がれそう、コイツ。綺麗な感じに整った顔。
「俺、寝坊したから朝メシも食うてないんや。ここで食べてもええ?」
「・・・・・・別にいいけど」
そいつは俺の隣に座り込むと、鞄の中からコンビニのオムライスを取り出した。
「いただきます」って手を合わせて言うのはいいけど、そのオムライスちゃんと温めてあるし。
もしかして最初から入学式サボるつもりだったんじゃないの?
「んー・・・まぁまぁやな」
・・・・・・・・・コメントしてるし。
「俺はっちゅうんやけど、あんさんは?」
・・・・・・・・・・・・・・・話しかけてくるし。
日陰になって気づいたのは、コイツの髪は金髪じゃなくってセピア色だって事。
さっきは光の加減で金髪に見えたのかな。
「越前リョーマ。一年二組」
「おー俺も二組や。よろしく頼むわ。仲良うしたってな」
「・・・・・・気が向いたらね」
俺がそう言うとはキョトンと目を丸くして、楽しげに笑ってみせた。
オムライスと一緒に取り出したペットボトルの蓋を開けて、オレンジジュースを一口飲む。
「越前はテニスやるんか」
疑問形じゃなく言われた言葉。
見ればの視線の先には俺のテニスバックがあって。
「まーね」
「ほ―――う」
頷いたの目が一瞬光を帯びた。
それを見て直感する。
はテニスをやる。しかもかなりの腕前だと。
対戦したらきっと楽しい。
キツくて苦しくて大変なゲームになるだろうけど、それでもきっと興奮するテニスが出来る。
勝つか負けるかなんて判らない。
それ以上のものを得ることが出来る。
自然と口元が上がるのが自分でも判った。
「これからよろしく、
「こちらこそよろしゅう頼むわ、リョーマ」
二人して不敵に微笑んだ。



入学式の最中に桜の木の下で運命の出会い。
青学に入った楽しみを、一つ見つけた。





2002年8月7日