相性とかいう以前の問題





正体不明の敵と戦うべく設立された、特務機関NERV。
零号機・初号機・弐号機を元に作成されたエヴァンゲリオンのパイロットを務めるのは、まだ十代の少年少女たちだった。
彼らは来たるべき戦いのために、日々過酷な訓練を重ねていた。



「・・・・・・複座?」
零号機を元に作られた新型エヴァンゲリオン―――通称「零隊」―――のパイロットの一人、は告げられた言葉に眉を顰めた。
作戦本部長である葛城ミサトは、仕事中の引き締めた表情を崩さぬまま頷く。
「そう。新たなエヴァ、これは四号機扱いになるんだけど、その試作機がもうすぐ完成するの」
「その四号機が複座なのですか?」
「そうなのよ。シンクロ率を更にあげて、効果が二乗とまではいかなくても二倍くらいにはなるだろうって予測も出てるわ」
「・・・・・・ゼーレからのお達しですか」
「さすが、話が早いわね」
「・・・・・・・・・父上が先日、『交響詩篇エウレカセブン』のDVDを徹夜で楽しそうに観ていましたから」
遠くを見るに、ミサトは思わず生暖かい目を向けてしまった。
NERVのバックにあると言われている秘密組織ゼーレ。の義父はその幹部に名を連ねているらしい。ミサトは会ったこともなく噂に聞くだけだが、どうやら仮面以上にその中身は不審だとか。
「・・・・・・まぁ、それはいいとして」
この切り替えの速さは慣れなのかしら。シンちゃんやアスカに見習ってほしいわねぇ、なんて思いながら、ミサトは尋ねてくるに首を傾げて先を促す。
彼女はこの部下の容姿が実に好みだったため、眼福に多少わくわくしながらも。
「その四号機がエヴァンゲリオンだろうとニルヴァーシュだろうと構いません。元が女性体ならば話は別ですが」
「あ、大丈夫よ。四号機の元はリリスじゃなくてアダムだから」
「そうですか、それで」
スウッと漆黒の目が細まった。

「まさか・・・・・・俺に、こいつと、複座に乗れなんて、そんなことを仰るつもりで・・・?」

場をすべて支配するような威圧感の中で、『こいつ』呼ばわりされた少年が軽やかに笑う。
「ひどいなぁ、君。そんなに嫌がらなくっても」
「貴様と乗るくらいならレイ・ザ・バレルの方がまだマシだ」
「ふふ、これだから僕は君が好きだよ」
「それ以上喋るな。父上のためにもパイロットを減らしたくはない」
攻撃的な拒絶と怪しげな好意。繰り広げられていく会話に、ミサトは呆れた様に力なく笑った。
性格の不一致はあれども、彼らが優秀なパイロットであり、シンクロ率や相互相性が良いこともまた事実なのだ。
「じゃあさっそく、絆を深めるためお風呂にでも入ろうか」
「一人で行け」
・・・・・・・・・前途はかなり、不安であったが。



とりあえずこうして、四号機パイロットはと渚カヲルに決定したのだった。





レイバレにとって最大の敵。
2006年4月4日