05:本当の親の手がかり
「何なら、私がその子の親を探そうか?」
コーヒーを飲みながら微笑んだデュランダルに。
「ひつようありませんっ!」
断ったのは、レイだった。
割合と頻繁にカフェを訪れるデュランダルは、ではなくクルーゼの顧客だ。
しかしそのクルーゼが自由と娯楽の旅に出てしまったので、その役目はそのままにへと引き継がれている。
美味しいランチとデザート、それに幾ばくかの情報を提供すれば、デュランダルは満足そうに微笑んで言ったのだ。
けれどその言葉は、ソファーに座って絵本を読んでいたレイによって、一刀両断にされてしまった。
愛らしく整っている顔を怒りに染め、レイはデュランダルを睨み上げる。
おや、と片眉を跳ねさせたデュランダルはひどく楽しそうで、は傍観に徹することを決め、カウンターの中で自分用のコーヒーを淹れ始める。
「どうしてかな? 君だって自分の親が誰か知りたいだろう?」
「おれのおやは、さんだけですっ! ほかのひとはかんけいありません!」
「君の親も、きっと君のことを捜しているよ」
「しりません! おれは、さんの・・・・・・っ」
「も、もしかしたら迷惑だと思っているのかもしれない。君の前では優しい父親の顔をしていたとしても」
「・・・・・・っ!」
レイの顔が、ざぁっと真っ白に変わった。考えてもみなかったことなのか、青い瞳が潤み始め、唇が戦慄いている。
小さな手がきつく自分の服を握って、薄い肩が震えた。
「・・・・・・そのくらいにして頂けますか、ミスター」
は溜息を吐き出し、カウンターから出るとぼろぼろと涙を零し始めたレイを抱き上げた。
泣きじゃくる背中を撫でてやり、縋り付いてくる手を許してやる。これだけでも破格にも程がある扱いなのに、どうやらこの子供はまだ気づいていないらしい。
にこれだけ優しくされる存在なんて、この子供を除けばクルーゼくらいのものだ。
「まるで昔のラウと君を見ているようだね」
デュランダルの笑みに、は肩を竦めた。
レイの背中を撫で続ける手は優しい。
その日、は珍しく意地悪をせずに、レイを抱きしめて眠ってやった。
2006年1月22日