[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。






04:可愛い寝顔が二つ





アキノは最近、父親の気持ちが判るようになってきていた。
それは自分の父親である「ラウ・ル・クルーゼ」の気持ちがよく判るようになったということであり、世間一般の「父親」の気持ちでは断じてない。
アキノは自分がクルーゼに遊ばれていることを知っていたし、それが愛情から来るものであることを理解していた。
つまり「可愛いから虐めてやろう」というものであることを。
そしてアキノはまた、自分が同じような気持ちを息子であるレイに抱いていることに気づいたのである。
それは僅かに、クルーゼとは違ったけれども。



突然湧いて出た血の繋がらない息子は、やけに自分に懐いている。
ソファーに座り、礼儀正しく両手を膝の上に載せ、ちらちらとこちらを見てくる。
湯上りほかほかの髪は、ドライヤーもかかってふわふわだ。初対面は薄汚れていたが、毎日風呂に入っている今では上質の人形のように見えなくもない。
時計の針は午後八時をさした。良い子はそろそろお休みの時間。
故に自ら良い子になろうとしているらしいレイも眠る頃なのだが、子供は先ほどから伺う様にアキノを見てくるのみで動こうとはしない。
これが何を意味しているのか、一緒に暮らし始めて二週間になるアキノは、もう気づいていた。

つまりレイは、自分に一緒に寝て欲しいのだ。

本当に、この子供はことごとく自分に似ている。昔の自分を見ているようで複雑だが、面白い。
父上もきっとこんな気持ちだったのだろう。そんなことを考えながら、アキノは素知らぬ顔で本を読み続けた。
とりあえず、あと一時間は放置しておくつもりだ。



クルーゼと同じように、アキノもまたレイを実の息子のように思い始めていた。
しかしそれは、僅かにクルーゼと違って。
「面白いから虐めてやろう」という、普通の親とはいささか違った愛情だった。





2006年1月22日