01:俺が・・・ママ?





開店させることのないカフェに降りてきてシャッターを開くと、何かが店の前にいるのには気づいた。
シンプルな扉を開くと、その何かが動く。ゴミかと思っていたそれは、どうやら子供のようだった。
小さな身体に似つかないジャンパーをまとい、手先は完全に埋もれている。
薄汚れた肌に金色の髪。五歳くらいだろうか、子供は不安か緊張にか青い瞳を潤ませて見上げてくる。
邪魔だ、とが告げるよりも一瞬早く、子供が必死な剣幕で口を開いた。
「あ、あの・・・っ・・・おれ、レイといいます・・・・・・!」
だからどうした。元来子供など好きでも何でもないは、冷ややかに応えようとして。
次の瞬間、珍しく硬直した。



「きょうからよろしくおねがいします・・・・・・っ・・・お、おかあさん!」



我を取り戻したが真っ先に思ったことは、面倒くさくて伸ばし続けていた髪を切りに行こう、というものだった。





2006年1月22日