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現れたのは、黒い隊服を着た男が一人、女が一人。
そして彼らを引き連れた純白の隊服を纏った男が、一人。
誰しもタリアほどの年齢に達しておらず、むしろシンやレイたちと同じくらいだろう。ほとんどない身長差がそれを裏付けている。
滑らかな光沢を見せ付けるかのように、白い隊服の裾が華やかに舞った。
「アドボロス隊隊長、だ。この度は迷惑をおかけした」
男の名に息を呑んだのはレイ。そして目を見開いたのはタリアだった。
ともすれば動揺で掠れそうになる声を抑え、被っていた帽子を脱ぐ。
「・・・・・・ミネルバ艦長、タリア・グラディスです。お会いできて光栄に思います」
「本来ならば丁寧に礼を述べたいところだが、当隊も任務に向かわなくてはならない」
「ええ、判っております。こちらから伺わなければならないところ、ご足労頂き申し訳ありませんでした」
「所属艦の艦籍番号も言えない迷子だから、こちらが出向くのは当然だ。―――シャニ」
呼べば、隅っこで流石に申し訳なさそうに立っていたシャニがちょこちょこと寄ってくる。
まるで子犬のような彼の額を軽く叩き、は僅かながら声に呆れを浮かべさせた。
「認識コードと艦籍番号、今日中に覚えろ。でなければ三回の艦内待機を命ずる」
「・・・・・・・・・の意地悪」
「クロト、覚えさせろ」
「えー僕が?」
「新作のゲームを買ってやる」
「わかった!」
控えていた男の一人が、喜んで了解する。満面の笑みを浮かべる彼は、ルナマリアと大して身長が変わらない。
それを言うなら、隊長と名乗る男は、シンやレイと同じような体格だった。
純白の隊服を身に纏い、漆黒の髪と目はとても美しいけれど、細い身体の所為か強いという印象はあまり受けない。
だからこそ彼女は、知らない内に呟いてしまった。

「あいつ・・・・・・本当にアドボロスの隊長なの・・・?」

刹那、彼女の視界が回った。





2006年1月12日