05.双生児の涙
夜中に、泣き叫んで起きることがある。
そういうときは必ず、メサイアで散った養父が夢に出てくる。愛していた女性に抱かれながら、自分には「生きろ」と言った。どうして連れていってくれないのかと泣き喚いた。今でもやはり思ってしまう。あのとき彼らと共に死ねたなら、きっと自分は幸せだったのに。
ぼろぼろと頬を伝う涙を、レイは乱暴に拭った。ベッドからふらふらと立ち上がる。どうしようもなくなる。こぼれる涙が止まらない。部屋を出て、廊下を歩く。隣の部屋のドアを、叩く。
「・・・・・・さん・・・っ・・・、さん」
返事はないけれど、堪えきれずドアを開けた。開かれたままのカーテンから月光が降り注いでいる。その偽物の光が憎らしかった。分けも分からずがむしゃらに駆け出し、ベッドに乗り上げてカーテンを閉める。荒く息をつくレイを、下からが見上げていた。暗闇の中でも分かる瞳が、ただ静かにレイを貫く。
「・・・・・・っ」
言葉にならず、レイはの上に崩れ落ちた。薄い胸。少女のような身体は鍛えることを止めてしまった。そしてそれは自分も。もう意味がなくなってしまったから。
あの人のいない世界に、意味なんてない。
すがりつき、レイは嗚咽を漏らし続ける。はただ、独り宙を見つめていた。
塞がらない瑕。
2006年6月22日