さらにおまけ。





a rendezvous in the universe





ラクスが目覚めたのは、彼女が眠りについてから二時間後のことだった。
ポッドはまだ暗い宇宙空間を漂っている。
の言葉は気休めとなってしまったけれど、ラクスは先ほどと同じ状態が続いていて嬉しかった。
まだ自分はの膝の上にいる。温かな体温と確かな鼓動を感じられる。
本当はもっとこのままでいたかったけれど、ラクスは顔を上げた。
その際に小さく、バレないように、赤い隊服に軽く唇を触れさせてから。
「・・・・・・おはようございます、様」
すぐ近くの美貌に向かって、ラクスは微笑んだ。
感情のない瞳を向けられて、やはりとても幸せだと思う。
不謹慎だけれど、本当はこんな状態を望むのはいけないことなのだけれども。
笑みが零れるのを、どうしても止められない。
「私、もう十分に休むことが出来ましたわ。ありがとうございます、様」
「まだ他艦との接触はありません。非常シグナルは発信しているので、通りかかりさえすれば保護してもらえると思います」
「そうなのですか・・・・・・。では、まだ時間はありますのね」
ふとラクスは微笑む。
そして言った。

「では、今度は様がお休みになられる番ですわ」



のことを、おそらく彼自身以上に判っているだろうラウ・ル・クルーゼはこう語る。
は意外と押しに弱いのだよ』――――――と。



様、どうぞお眠り下さい」
ラクスは笑顔を浮かべている。
「結構です。いつ何が起こるか判りませんから」
は無表情を貫いている。
「そうなったらお起こししますわ。どうぞお眠り下さい」
「結構です。敵艦に見つかると困りますから」
「そうなったらそうなった時ですわ。どうぞお眠り下さい」
「結構です。数日くらい寝なくても大丈夫なよう訓練はしていますから」
「私を守って下さるのでしょう? そのためにも、どうぞお眠り下さい」
「結構です」
「お眠り下さい」
「結構です」
「そうですか・・・・・・」
頬に手をあて、ラクスは残念そうに呟いた。
「それでは私は、子守唄を歌わないといけませんのね・・・・・・」
いざ、と息を吸い込んだラクスの口をは手で塞いだ。
いくら2時間の静寂を挟んだとはいえ、彼は再びラクスの歌を延々と聴かされるのは御免だった。
癒しの声だろうがプラントの歌姫だろうが関係ない。狭い密室では公害以外の何物でもない。
溜息を吐き出しつつ、降参の狼煙を上げる。
「・・・・・・判りました。少し休みますから、大人しくしていて下さい」
が目を閉じるのを見届けて、ラクスは小さな声で囁いた。

「お休みなさいませ、様」



目を閉じているの顔を、彼の膝に横座りしながらラクスは眺める。
愛しい人の寝顔は、見ているだけでひどく幸せな気分になる。
トクトクと心臓がいつもより早いペースで鼓動を刻むのを、熱くなる頬を押さえながら感じて。
白皙の頬に、そっと唇を寄せる。



ストライクが救命ポッドを拾うまで、後数時間。





2004年11月3日