君、美少女な彼女さんとはその後どうですか〜?」
「どうって?」
「デートとか、どこに行きました?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・、君?」



ニッコリ笑わないでくれ、スガ!
ごめんなさい! 俺が悪かったです!





恋愛は判読不能





「小島」
「何? 
放課後、今日はクラブもない日。
俺は部活に行こうとしていた小島を捕まえた。
「今日、サッカー部って何時まで?」
「5時半だけど・・・・・・」
「そっか。じゃあ待ってるからさ、一緒に帰ろう」
「・・・・・・え」
驚いたように目を丸くして小島が固まった。
俺はそんな小島の反応にビックリして目を丸くする。
・・・何か変なこと言ったっけ?
小島の頬がだんだんとピンク色に染まって。
「・・・・・・初めて、じゃない。そんなこと言うの」
「え、ああ、うん。・・・・・・初めて、だな」
俺の声も思わずどもってしまう。
無意識のうちに顔が熱くなっていくんだけど。
うわー恥ずかしい! これが恋愛ってやつなのか!?
待てスガ! 答えてくれ! (あいつは今日、この前差し入れに来てくれた子とデートとか言ってたけど!)
俯いた小島の黒髪からのぞく耳が真っ赤に染まっていて。
俺だけじゃないんだって判ったら、少しホッとした。
嬉しくも、なって。
「図書室で待ってるからさ、終わる頃に迎えに行くよ」
「・・・・・・わかった」
コクンと小島が頷いた。あぁ、やっぱり可愛いよ。
こういう彼女を見てるとさ、俺も好きになりたいとか思うわけだ。



図書室からは校庭が見える。
サッカー部のやつらが必死でボールを追い掛けていて。
やっぱり水野と佐藤はずば抜けて上手いな。
あと風祭と不破もイイ動きしてる。
部活のこのほのぼのとした雰囲気は俺の所属するマリノスユースにはないものだな。
クラブサッカーは基本的に誰もがライバルだし。
たまに仲のいいのもいるけど。
俺とスガとか、ロッサの真田・郭・若菜とか。
でもそんな俺たちでも根底にあるのはライバルに対する敬意と競争心で。
だからこそ育まれるものがあるんだと思う。
俺はそれが好きだから、部活ではなくクラブに入ったんだ。



休憩中には小島がタオルやドリンクを持って走り回っていた。
茶色のショートの女の子が風祭にドリンクを持っていって。
おお、見てるだけで判るぞ。好きなんだな、風祭のこと。
うん、いい趣味だな。いや本気でそう思う。
小島もさ、何で俺なんだろう。
同じサッカー部には美形で人気のある水野だっているのに。
以前は噂にもなっていて、俺も二人は付き合ってるんだって素で信じてたし。
何で、俺なんだろう。



そんなことをボケーッと考えていると時間はアッという間に過ぎるもので。
サッカー部の片付けが始まった頃に、俺は図書室を後にした。



小島はまだ部室から出てこなくて、わざわざ行くのもどうかと思ったから俺は校庭で待っていた。
夕焼けに光る、サッカーゴール。
いつもは背にして立っているから判らないけど、やっぱり大きいものなんだよな。
黒と白の小さなボールがこのゴールに入らないようにするのがキーパーの役目。
そしてそのキーパーの負担を少しでも軽くするのが、ディフェンダーである俺の役目だ。
ときどきは俺もシュートを決めたりするけどな。
うちの攻撃面の司令塔はスガだけど、スガはシュートするよりもパスを回す方が好きだから。
オーバーラップしてきた俺にも平気でパスを出したりして。
ま、それを楽しんでいる俺も俺だけど。
・・・・・・そういえば、もうすぐ選抜が招集されるんだっけ。
オファーが来てるのは関東選抜と東京都選抜だけど、どっちにするかな。
スガと話でもしてみようか。



?」
声をかけられて振り向けば、そこには水野と佐藤と風祭がいた。
不破はいないのかと思って見てると、どうやら部室の方で後輩を相手に噂の考察を繰り広げているようで。
「どうしたんだ、こんなところで」
「あー、ちょっと人を待ってて」
「人?」
首を傾げる水野に佐藤が隣からツッコミを入れた。
「あかんで、タツボン。夕方の人待ちいうたら女に決まっとるやんけ」
「えっ・・・!」
真っ赤になったのは何故か風祭で。
・・・ここは俺が赤くなる場面なんじゃないのか?
別にそんなのいいけどさ。
「あ、じゃあ僕ら行くねっ! またね、君!」
「あぁ・・・」
「何言うとんのや、ポチ。相手の女を見ずに帰れるかっちゅーねん」
「シゲ! 失礼だろ!」
「だってここで待ってるちゅうことは相手は俺らの知っとる人間やで。違うか?
「いや、違わないけど」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・はっ! 俺、また何か変なこと言ったか!?
佐藤も水野も風祭も目を丸くしてるんだけど。
・・・・・・・・・・・?
変な沈黙だなー。




また呼ばれて顔を上げると、制服に着替えた小島が鞄を手に部室から出てきたところで。
「ごめん、遅くなって」
「あー、いいって。平気」
それよりも水野たち三人の目がさらに丸くなってるんですけど。
どうすればいいと思う?
「・・・・・・何やってんのよ、あんたたち」
小島が冷ややかな目で見ると、佐藤はハッと我に返ったように目を瞬いた。
「小島やったんか!? の待ち人っちゅーんは!」
「そうだけど、それがどうかした?」
俺が答えると風祭が赤くなっていた顔をさらに赤くさせて。
「えっじゃ、じゃあ小島さんと君って・・・・・・」
「「付き合ってるけど」」
おお、ハモッた。
意気投合ってやつか。けっこう相性いいのかも、小島と俺って。
風祭も佐藤も水野も開いた口が塞がらないって感じであんぐりと大口を開けていて。
「じゃ、帰る? 小島」
「そうね。バイバイ、また明日」
固まったままのあいつらに手を振って。
俺たちは並んで歩き出した。



・・・・・・とは言っても。
・・・・・・・・・話が続かない・・・。
だってさ、付き合い出してまだ一週間だし、俺はクラブで忙しいから一緒に出かけたりも出来ないし。
こうして二人きりになったのもひょっとしたら初めてなんじゃないのか?
こういうときはどうしたらいいんですか? 助けて下さい、スガ様。
「・・・・・・何で」
・・・・・・?
「何で今日、突然一緒に帰ろうなんて言ったの?」
小島が俺を見上げて聞いてくる。
「あ、ゴメン。嫌だったか?」
そうだよな、小島にも小島の都合があるだろうし。無理させちまったのかも。
「違う! そういうんじゃなくて・・・・・・」
フルフルと首を振ってはまた俯いて。
・・・とりあえず、嫌がられてはないみたいだ。
「俺さ、小島のこと好きになりたいけど本当にまだ全然小島のこと知らないし。話とかすればちょっとは判るのかなって思って」
俺自身、話をしてみたいと思ったから誘ったんだけど。
スガにも散々言われたしな・・・・・・・。
「小島ってサッカー上手いんだな」
図書室から見ていた感想を言うと、小島はパッと顔を上げた。
「パスとか正確だったし、フェイントも上手かったし」
まあスガには敵わないだろうけど。
むしろスガより上だったら困るって。クラブにスカウトしなきゃ。
「・・・・・・は、女子がサッカーをやるのってどう思う?」
女子が?
サッカー?
そんなの別に。
「いいと思うけど? 男女関係なく、サッカーが好きならやればいいと思うけど」
性別なんて関係ないじゃん。
たしかに男子と女子じゃ体力とかは違うかもしれないけれど、女子は女子でLリーグもあるし。
世界レベルでは日本の女子って男子よりも高いんじゃなかったっけ。
俺がそんなことを考えていると小島は肩にいれていた力を抜いて柔らかく笑った。
空いていた俺の手を、そっと握って。
「・・・・・・これだから、私はが好きなのよ」
笑った小島はすごく可愛かったんだけど。
すごくすごく可愛かったんだけど・・・・・・!
『これだから』って何なんだ!?
俺はまた何かやったのか!?
嬉しそうに笑っている小島を見ながら、俺はやっぱり頭を悩ますのだった。



「どうでした〜? 帰り道デートは」
「どうしたもこうしたも・・・・・・(かくかくしかじか)」
「それはそれは・・・。やっぱり君はカッコイイですね〜。僕の自慢の親友ですよ〜」
「俺にはさっぱり判らんがな」
「それでいいんですよ〜。無自覚っていうのがまた可愛いんですから」
「・・・さっきと言ってることが違くないか?」
「それはそれ、これはこれ、ということで」
「・・・・・・」
「じゃあ次はステップ2ですね〜。その彼女さんを次の試合に招待しましょう」
「・・・・・・おい」
「サッカーしている君を見て、彼女さんはますます惚れ直す。素敵ですね〜」
「・・・スガ。おまえ、小島を見たいだけだろ」
「あ、やっぱり判っちゃいました?」



とりあえずステップ1はクリアということで。
ああまったく。
本当に恋愛は奥が深い。





2002年11月22日