後で切り離されるくらいなら
どうぞ、最初から
a godchild did godless doings
最初に
最初に告げておかなくてはいけないこと
俺は、弱いから
得た後で失うなんて耐えられない
ならば、最初から
俺を捨てるのなら、どうか最初から
「・・・・・・・・・・榊さん」
声が震える
俺って、本当に弱い
笑ってしまうほど
今も、恐れている
たった一言口にするだけなのに
それは何よりも強大な鎖をもってして俺を縛る
だけど今は
今、なら
「俺には、双子の片割れがいます」
一生ついてまわる事実を、今
「ソイツは、俺と同じくらいテニスが上手くて、俺と同じくらい素質もあります」
ここで捨てられても、希望はあるのだと判ったから
「プレースタイルは全然違って、リョーマのテニスは俺と違って明るくて。最初から飛ばしていける頼もしいプレイヤーで」
絶望と同じように、希望をもたらしてくれる人もいるんだと判ったから
「だから」
泣かないで、言えるよ
「だから、俺じゃなくてリョーマを」
リョーマじゃなくて俺を
「リョーマ、を」
・・・・・・・・・俺を
選んでください
「勘違いしてんじゃねーよ」
隣から降ってきた声に顔を上げた
跡部さんが、ほのかに揺らいでいる
泣かないって、決めてるから
うっすらと、ほのかに
「ついさっき俺と試合したのは誰だ? その双子じゃなくておまえだろーが」
ペシッと頭をはたかれて
こういうスキンシップ、久しぶり
「だったらおまえでいいんだよ」
「・・・・・・・・・でも」
「おまえ『でも』とか『けど』とか多すぎ」
また、はたかれた
でも痛くない
温かい
跡部さんが笑う
「俺が越前を選んだ。―――――――――それでいいだろ」
・・・・・・・・・十分すぎるほどに
ポンッと頭に手が載る
それは跡部さんのものではなくて
どこか大きく温かいものに包まれた手
「・・・・・・・・・・・・榊さん」
見上げれば穏やかな笑顔
「私も跡部と同意見だ。私が欲しいのは越前であり、越前リョーマではない」
言い切ってくれる優しさが嬉しい
「でも、俺よりもリョーマの方がいいテニスをします」
絶望をもたらす俺
光を示すリョーマ
どちらが良いかなんて
「私は君のテニスも良いものだと思うが?」
「お世辞ならば結構です」
それでも十分嬉しいけれど
・・・・・・嬉しいから
でも、榊さんは笑った
「では言い換えよう。―――――――――越前のテニスが、私は好きだ」
・・・・・・・・・欲しかった、言葉
「氷帝のモットーは『敗者切り捨て』だが、これは負けた選手を切り捨てるという意味ではない」
榊さんの声に、俺は見上げて
「テニスで負け、そして精神でも負けたものを切り捨てるという意味だ。氷帝に必要なのは精神的に強い選手だけだからな」
コクリと、頷く
「負けても何度でも立ち上がっていく選手。それが氷帝のテニス部員だ」
胸が、熱くなる
「ここでなら、君のテニスは否定されることなく受け入れられる。何よりそれが最優先事項なのだから」
目が、霞む
「どうだ、」
「氷帝で、テニスをしないか?」
声にしたら泣きそうで
握り締めた手は痛くて、でも幸せで
小さく首を縦に振るだけで、精一杯だった
徳川さん、俺やっと見つけたよ
2003年3月27日