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ワンショットでゲームが変わるものだと
その場にいた誰もが知った



畏怖と共に、初めて





a godchild did godless doings





4ゲームが終わって、跡部が3ゲームリード
ベンチへと下がる二人
部員によって用意されたらしいドリンクを飲んで
ルカがベンチへと腰掛ける
脇には脱いだ黒のコート
頭には白いタオル
トン、トンと足が動いて
ラケットを握って



―――――――――笑う



もう戻れない



繰り出されるショットに
鋭いスマッシュに
まるで踊るようなステップに
跡部景吾というテニスプレイヤーのすべてに触発されて
ルカは、熱くなってきている自分を感じていた
辞めようと思ったのに
テニスプレイヤーの自分が目覚めてしまった



もう、戻れない



足が動く
スピードが増す
正確さも
何もかも



片足のスプリットステップの間にラケットを持ち替えて
左腕を振り抜いた



コーナーを狙ったボールに、跡部は一歩も動けなかった



ワンショットでゲームが変わる
ワンショットでテニスが変わる
ワンショットでプレイヤーが変わる
こんな劇的に
あまりの変わりように
跡部は先ほどよりも真剣にボールを追いながら納得した
コイツの言ったことは本当だったのだと



相手にテニスを辞めさせるだけのものが、コイツにあるのだと
・・・・・・・・・納得せざるを得なかった



逆にルカも確信していた
相手が、自分で「勝つ」と言うだけはある、と
予想以上に強いプレイヤーだと
痛いくらい納得していた
だからこそ止められない
動く足が、腕が
ゲームを組み立てる頭が、感覚が
笑みを刻む口元が
止められない
自分とは違うところで覚醒していく自分



止められない



ゲームが動く
一瞬で変わったルカのプレーに氷帝の誰もが釘付けになって
跡部優勢で進んでいたゲームは、いまや5-4でたったの1ゲーム差に
ルカが追い詰めて
跡部が追い詰められて
でも二人、楽しそうに



笑った



この瞬間に笑える人物を、ルカは求めていた
この瞬間に強まる人物を、跡部は求めていた
お互いに、高められるプレイヤーとして



仲間と、して



出会いたいと思っていた



――――――――――――見つけた





2003年3月25日