見つかると、いいね
a godchild did godless doings
越前双子といえば、アメリカのジュニアテニス界では有名だった
それはいい意味でも、悪い意味でも
越前リョーマと越前
彼らの存在は脅威だった
けれど
「やだよ俺、・エチゼンと試合すんの」
「俺もイヤ。だってアイツのテニス、見てるだけでイヤになるし」
「リョーマ・エチゼンの方はそうでもないんだけどさ」
「・エチゼンはダメだって」
「だってアイツのテニス、最低だから」
小さな小さな子供
元プロテニスプレイヤーの父を持ち
神に愛された才能を持つ二人の子供
幼いながらにも判る端正な容姿
それだけでも十分だったのに
神様は二物を与えてしまった
「・・・・・・・・・大丈夫か? 」
父親の問いに首を傾げる子供
「なんで? おれ、へーきだよ? いまのしあいにもかったし」
「・・・・・・、こっちへいらっしゃい」
母親に抱きしめられて首を傾げる子供
「かあさん? おれへーきだよ? どこもいたくないよ?」
肩口が濡れた理由を、まだ子供は知らなかった
自分だけが否定されている事実を知るには、幼すぎた
けれど、そんな日々も終わりを告げる
「・・・・・・・・・君とはもう、二度と試合をしたくない」
アメリカのジュニア大会決勝
の、対戦した相手
それはジュニア界の頂点に立っている選手の一人で
ずっと試合してみたいと思っていた
一緒に、テニスを
一緒に
「君とはもう、二度と試合をしたくない」
そう言ってコートを去った彼
テニスを辞めたと聞いたのは、二週間後のことだった
「・・・・・・なん、で・・・・・・・? 俺のテニス、どこか悪かったの・・・・・・?」
唇を噛み締めてうつむく子
言葉の裏に潜む刃まで、判る歳になってしまった
「辞めたって・・・・・・・・・・なんで、俺、・・・嬉しかったのに・・・・・・・・・っ」
望むなら、ずっと知らないままでいて欲しかったのに
願って叶うなら、いくらでも願ったのに
「対戦できて、嬉しかったのに・・・。試合、本当にわくわくして、楽しかったのに・・・・・・」
震える手の平、そっと覆った
小刻みに揺れる黒髪、そっと撫でた
「なのになんで・・・・・・なんで・・・・・・・・・・っ」
抱きしめた、小さな身体
服を湿らす、温かい涙
「・・・・・・・・・なんで、俺じゃダメなの・・・・・・っ!?」
準決勝で、リョーマは負けた
そのときに勝った相手は言ったのだ
「君とはまた、試合をしたいな」・・・・・・と
すごく羨ましいと思って
だからこそ、決勝では全力を出して頑張ったのに
それなのに
二度と試合をしたくないと言ったときの相手の表情
今まで生きた短い人生の中で、一番冷たいものだった
初めて見る、形に表れた絶望
それを彼にもたらした自分
今まで言われてきた悪意の言葉が、堰を切ったようにあふれ出して
―――――――――流される
「見つかると、いいね」
緩やかに黒髪を撫でながら
「君のテニスに負けない強い人が、いつか見つかるといいね」
震える肩を抱きしめながら
「何度負けても向かってくるような強い人が、必ずいるから」
優しく背中を叩きながら
「必ずいるよ。君とテニスをしても笑えるような人が」
強い抱擁を与えながら
「必ず、いるから」
見つかると、いいね
声をあげて泣いたのはこれが最後
それ以降、大会に越前が出ることはなかった
見つかると、いいね
2003年3月27日