テニスが好きかと聞かれたら
俺はきっと答えられない
a godchild did godless doings
跡部景吾さん
一球一球が重い
それはきっと体格の差だけじゃなくて
気迫の差
俺にはない、それ
伸ばしても届かないラケット
もっと速く、走らなくては
両手でも返すのがやっとのショット
もっと強く、踏み込まなくては
この人には勝てない
・・・・・・・・・・・・勝てない?
自分の思考回路に愕然とした
勝ちたいの?
俺は、この人に
体が温まってきているのが判る
跡部さんの動きに
引きずられるように高まっていく俺のプレイ
どうしよう
つられる
奪われる
俺の、枷が
外されてしまう
あなたを傷つけたくないんです
あなたに泣いて欲しくないんです
あなたのテニスを奪いたくないんです
それなのに
それなのに
それなのに
何であなたはそんなに俺を煽るの
やめて
もう、やめて
――――――――――――やめ、て
「やめねぇよ」
跡部さんの声が響く
気がつけば周囲のコートで練習していた部員の人たちも、みんな俺たちを見ていて
「ここでやめたら、おまえテニス辞めるだろ」
息を、呑む
跡部さんは俺を見て笑った
でも目だけは真剣な眼差しで
俺を捕らえて放さない
「辞めさせて堪るか」
泣きそうになった
俺の、心のうちを見透かされて
その目に、囚われてしまって
泣きそうになった
心とは裏腹に温まっていく体
ショットにもう、追いつける
スピードがもう、最高になる
どうしよう
どうしよう
目覚めてしまう
テニスをどうしても捨てられない自分が
混乱の中で目覚めてしまう
まって
まって
まって
俺の望みとは関係のないところで
俺の手は振り抜かれてしまった
どうしよう
目覚めてしまった
2003年3月26日