俺のテニスを受け入れてください
俺のテニスを受け止めてください
俺のテニスを否定しないで下さい
俺のテニスを赦してやって下さい
俺をどうか、認めてください
a godchild did godless doings
ネットを挟んで見ていた俺
かけられた声に振り向いた先、見たことのない男
確かにこの学校に来たのは初めてだから
初めて見る、テニスプレイヤー
右腕に抱くラケットが光る
「・・・・・・・・・すみません、練習の邪魔をしてしまいましたか」
「今日は見学日じゃねぇ」
「そうなのですか。申し訳ありません、学校案内で紹介されたのでついと思いまして」
「オマエ、小6か」
「はい」
「うち受けんのか」
「まだ正式に決めたわけではありませんが」
「テニス出来んのか」
「えぇまぁ、一応」
「強いか」
―――――――――――――――強いか?
「・・・・・・・・・ここのレギュラーと同じくらいには、強いですよ」
最低でも、ね。
越前の血がなせる業なのか、俺はこんなときに挑戦的な物言いをしてしまう
それは父さんも同じ
リョーマも、同じ
案の定目の前の男は不愉快そうに眉を顰めた
「俺は跡部景吾。ここの部長だ」
「・・・・・・・・・部長さんでしたか。それは失礼いたしました」
「テメェ、強いんだな?」
「そこそこには」
「なら相手しろ。そこまで言う腕を見せてみろよ」
渡された、ラケット
ストリングのテンションが俺のと同じで
何故だか、手にしっくりと馴染んだ
それがいけないんだ
好戦的な気持ちに拍車をかける
「俺と試合したら、テニス辞めたくなりますよ」
「ハッ! そこまで強いって言うのかよ」
「強いかどうかは判りませんが、絶望をもたらすことは絶対です」
「絶望?」
「俺とテニスをしたら、辞めたくなりますよ」
俺のテニスは、悲しみしかもたらすことが出来ないから
「・・・・・・・・・それでも、いいんですか?」
目の前の男は、笑った
笑った
哂った
嘲笑た
そのままフェンスを越えてコートへと連れて行かれて
周りの訝しむような視線よりも
俺はこの人の笑みに囚われてしまって
腕を掴む手の温かさに囚われてしまって
ラケットが、手に馴染む
どうして
どうして
どうして
・・・・・・・・・どうし、て
「・・・・・・俺とテニス、するんですか・・・・・・・・・?」
どうして
「するに決まってんだろ。でなきゃテメェをコートに入れるかよ」
そんな
「さっき言ったこと聞いてました? 俺とテニスしたら、絶対にあなたはテニスを辞めますよ?」
だから
「辞めるか辞めないかは俺が決める」
そうじゃなくて
「もうテニス、出来なくなりますよ?」
だから
「それはねぇな」
おねがい
「俺とテニスした人、絶対泣くんです。俺、泣かしたくないんです。だから」
どうか
この手を離して
泣きそうな声になってしまった
腰までのネットの向こうで動いた影が見えて
顔は上げられない
情けなくて悔しくて
申し訳ないと思ったから
強いだろう貴方だからこそ、ここで消えて欲しくない
だから、どうか
「俺は勝つ」
・・・・・・・・・掴まれた腕が痛い
「俺は負けない。何があろうと」
「何があろうと負けたりしない。たとえテニスで敗れたとしても」
「それで良いとは思わない。必ずソイツを負かしてやる」
「それが、『勝つ』ってことだろ」
「―――――――――違うのかよ?」
その真剣な瞳に何も言えず、俺は渡されたラケットを握り締めた
2003年3月23日