「ねぇねぇ跡部君」
「あぁん? んだよ、千石」
「氷帝に一年生いるでしょ。それもテニス部に」
「はぁ? 一年くらいいるに決まってんじゃねぇか」
「そうじゃなくてさ」
ニッコリと食えない笑みを浮かべて



「青学の越前リョーマ君とそっくりの一年生がさ」



投げられた小石
広がる波紋
迫りくる嵐



激突は必至





be frank and tell me everything





泣きそうな顔を覚えている
それでも泣かなかった顔を
『俺、双子の片割れがいるんです』
整った顔を醜く歪めて
それでもとても、綺麗だった
――――――――――忘れられない



「・・・・・・気のせいだろ」
つとめて普通に、冷静に
「うっそうそ! だって俺この前見たし。氷帝の制服着てテニスバッグ持ってる越前君のソックリさん!」
「本人なんじゃねーの」
「隣に青学の制服着た本物がいたっていうのに?」
チッと舌打ちをした



並んでいた二人
どう見ても血縁
それももっとも近しい血の繋がりを感じられた
明るいとは言えない雰囲気に気圧されて
二つ揃いの硬質な美貌に奪われて
その違いに気づいたのは彼らが去ってからのことだった



「ね、アレ誰? 俺の予想だと青学ルーキーの双子だと思うんだけど。どう?」
「・・・・・・勝手にそう思ってろ」
「うわヒッドーイ跡部君! じゃあいいよ、氷帝に行って直接本人に聞くから。『君は越前リョーマ君の何なんですか?』って」



それを、アイツに聞くのか



「――――――千石」
低くなった声は意識的な代物
攻めるように
守るように
けれど相手は不敵に笑う
いつも通り
明るすぎる態度で
「じゃあ教えてよ。あの子が一体何者なのかさ」



越前リョーマよりも先に出会ったから
そんな理由で彼の傍にいるわけじゃない
ただ、愛しいと思ったから
外見や仕草ではなく
彼の心を
怯え悲しみ
逃げたくても逃げられない
それでも確たる心を持つ
強くて弱い彼を愛しく思った
だから傍にいるのだ



「越前、君。やっぱり双子かー。どっちが兄でどっちが弟?」
「さぁな。本人たちが気にしてないんだから別にいいだろ」
「テニスはどう? 強い?」
「強いぜ。準レギュラーの中でトップに立つのも時間の問題だろ。全国大会では正レギュラーとして使うつもりだしな」
「まだ入学して2ヶ月なのに!? うっひゃー怖いねぇ」



少し長い髪
耳元で光っていたピアス
そんなものじゃなくて
違いはどこだ
違いはどこだ?



「千石」
呼ばれた声に思考を中断して顔を上げる
真剣な瞳
怜悧な美貌に射抜かれて
圧倒的なプレッシャー
と越前リョーマと、両方気になるうちはに近づくな。もっと情報が欲しいなら越前リョーマに聞け」
「・・・・・・・・・跡部君は青学ルーキーがお嫌い?」
窺うような質問をハッと軽く吐き捨てるように嘲笑って



が好きなだけだ」



俺は絶対にを裏切らない



おそらく越前リョーマと越前は仲が悪い
おそらくではなく、これは確信
先ほどの態度から王者な彼がについていることは明白だし
このぶんなら氷帝は全員の味方だろう
じゃあ青学はリョーマについていると思うのが当然だろう
一応確かめてはみるつもりだけれど
ならば、自分はどちらにつくべきか



表立って敵対しているわけではないから更に性質が悪い
きっと憎しみ合っているのは本人たちだけ
周囲は愛しているだけだ
双子の、片方を



愛し愛されて
憎み憎まれて
それでは満たされることはない
決して
二人の世界には入れない
けれど愛さずにはいられない
複雑な愛の形
それでも願わずにはいられない



双子のうち、愛する彼だけの平穏を





2002年10月15日