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・・・・・・怖くないといったらそれは嘘だ
俺は、怯えている
彼の発するかもしれない言葉に
「・・・どうでした? 俺の片割れに会った感想は?」
はやる胸、押さえて
「何や、あんまり似てへんかったわ」
あぁもうこれだから
これだから俺はあなたたちの傍にいるんです
the light struck through the darkness
遠くから聞こえる歓声
でも俺には関係ない
目の前にいる忍足さんにも
「似てなかったですか?」
「せやな、あんまり」
「嘘、でしょう?」
俺とリョーマはこんなにもソックリなのに
それなのに『似てなかった』と?
忍足さんはあごに手を当てて
そんな仕草も様になるからカッコイイね
「外見はそれなりに似てたで。けど中身はそうでもないと思ったわ」
似て、いない?
「ルカとは違うんやってちゃんと判ったしな」
似て、いない
違うんです
俺とリョーマは違うんです
こんなにもソックリだけれど俺とリョーマは違うんです
別人なんです
「ルカのこと探しとったで? 跡部と一緒言うたらあからさまに嫌そうな顔しとったなぁ」
楽しそうに笑う忍足さんに
俺も、笑う
「嫌いなのに、求めずにはいられないんですよ」
俺とリョーマは
対極の存在なのにどうしてか魅かれて止まない
「こんなにも、傍にいるのに」
限りなく遠い
遠くて深い
深淵が二人を別つ
嫌いだよ、リョーマなんて
触れる手が温かい
優しくて少し痛い
涙を呼び起す感情
「ルカはルカやろ。氷帝のテニス部一年で俺らのお気に入りや」
頭を撫でる手が切ない
「あの越前リョーマっていう奴も確かにルカと似とる。でもそんなん外見だけや」
抱きしめる腕が苦しい
「ルカはルカや。ルカ以外の何者でもない。俺が保障したる」
優しい笑顔が狂おしい
「ルカやったらきっと跡部も岳人も宍戸も鳳もジローも樺地もみんな保障してくれると思うで? もちろん榊監督もな」
どうしてそんなに優しくしてくれるの
「そんなん、ルカが好きだからに決まっとるやろ」
魔法のような言葉
信じてもいいの?
信じさせてくれるの?
その想いを俺のものにしてもいいの?
『・・・・・・・・・
ルカ
』
聞こえた、声
俺と同じ
同じ、声
「・・・・・・ありがとうございます、忍足さん」
その胸を押し返して笑顔を浮かべて
バレないように
バレないように
「ええって。ルカのためなら何でもしたるわ」
ゴメンナサイ
嬉しかった
嬉しかった
本当に嬉しかった
嘘じゃないんです
でもダメ
俺はその想いを受け取ることは出来ないんです
だって俺には
リョーマがいるから
俺とリョーマは同じなんです
俺とリョーマは異なるんです
同じ魂から生まれてきたんです
違う肉体で誕生を受けたんです
曖昧な境界線
俺とリョーマの同一性はどうしてですか
俺とリョーマの違う点はどこなんですか
教えろよ、カミサマ
信じちゃいないけどとりあえず言いたくもなる
答えなんてどこにもないことくらい判ってるけど
聞かずにはいられないくらい動揺してるから
ねぇ、楽しい?
俺とリョーマを手の平で転がしてさ
同じ顔を両側にはべらすのが趣味なわけ?
だとしたらイイ性格してんじゃん
ねぇ、カミサマ
アンタを恨むだけじゃ俺の心は解かれないんだよ
この鎖を放つことが出来るのはただ一人
俺の半身、リョーマだけ
だけど俺たちは縛られることを望んでいるから
離れても離れられない
憎んでも憎みきれない
互いに所有しあうことを黙認して
あぁ、なんて不毛な関係
俺とリョーマは永遠に二人だけなんです
だから俺は逃げた
綺麗だと褒められた髪を伸ばして
プレゼントされたピアスをつけて
少しでも違いを見せ付けるように
見せ付けるように
誰に?
どこまでも続くメビウスの輪
裏と表は一つにはなれない
そんなことはとっくに判っていたのに
じゃあなんでこんなに似てるんだよ
逃げても逃げてもどこにも行けない
それでも逃げずにはいられない俺を、きっと笑っているんだろう
カミサマと、リョーマは
2002年10月13日