探るような視線
どことなく一歩引いた態度
いつもと違って大人しい
・・・・・・ああ、そういうこと
「菊丸先輩、に会ったんですか」
俺との世界がほんの少しだけ重なった
see the silver lining in the dark cloud
ビクッと体が動いて、それがイエスの返事代わり
分かりやすすぎる態度に肩を落として
そして見上げる
「俺とは双子なんですよ。先輩も間違えたんですか?」
それは仕方ないけど
だって生まれて12年以上経つのに、親でさえ今でも間違えるし
最近はそんなことないけどね
が髪を伸ばしてピアスをつけ始めたから
黙ったままの先輩
呆れてため息をつく俺
「・・・ホントに・・・・・・?」
「そうっスよ。ソックリでしょう?」
『そうですよ。ソックリでしょう?』
先輩が身を固くした
きっととシンクロしたんだ
まったく本当に
どうして俺たちはこんなに似ているんだろう
「どうでした? 俺の片割れに会った感想は?」
片割れなんて言葉は相応しくないけど
菊丸先輩はじっと俺を見て
ためらうように口を開く
「オチビ・・・・・・アイツのこと嫌い?」
嫌いに決まってるじゃん
でもそれよりもムカツクのは
「『アイツ』じゃなくて名字で呼んでくれます? には越前っていう名前があるんですから」
俺と同じ名字
俺と違う名前
俺たちの識別番号
たとえ誰が相手でも俺の許可なくを呼び捨てるなんて許さない
菊丸先輩は泣きそうに顔を歪ませて
「・・・・・・ホント、ソックリ・・・・・・」
呟いた声、耳に響く
「・・・・・・さっきも同じこと言われた」
俺と同じ声と顔で?
俺とは本当によく似ている
どうしてこんなに似ているのかと思うくらい
だからこそ嫌いになる
だからこそ憎みたくなる
「俺はが嫌いっスよ。も俺のこと嫌ってるし」
胸が痛む
けれどこれは幻
俺と同じを嫌うことは、俺自身を嫌うこと
だから心が痛むんだ
「何で? だって、双子なのに・・・・・・」
「双子だから何っスか?」
そんなこと何の意味もない
意味のあることは俺とがいること
お互いが同じこと
お互いが違うこと
それだけがすべて
血のつながりも魂の共存もそんなものに意味なんてない
意味があるのは俺とがいること
ただ、それだけ
菊丸先輩は俺の言ったことがショックみたいだった
そういえば誰かから先輩は兄弟がたくさんいるって聞いたことがある
きっと仲がいいんだね
だから不思議に思うんだ
俺とが憎しみ合うことが
同じだから嫌い
異なるから嫌い
俺と同じ
俺と違う
俺たちは一体何をしたいんだろう
どうして生まれてきたんだろう
一つの魂だったはずなのに
わかれてしまった
わかれてしまった
「・・・・・・心配しなくても」
眉の下がった先輩にいつものように笑ってみせて
「俺とはそれなりに仲よくやってますから。大丈夫っスよ」
それなりの基準はずいぶん違うみたいだけどね
「だから」
俺との世界に入って来ないで
俺との世界がほんの少しだけ重なった
本当に少しだけ
それでも俺は嬉しかったんだ
2002年10月9日