「何や、ホンマにそっくりなんやな」
・・・・・・・・・うるさいよ
「顔に体型、声まで一緒やん」
・・・・・・・・・同じで悪い?
「これじゃが嫌いになるんもわかる気がするわ」
・・・・・・・・・知ってるよ、そんなこと
ずっと、ずっと前から
two sides of the same coin
俺のジャージ
青と白と赤のジャージ
背中にSEIGAKUってロゴの入った
一目で分かるレギュラージャージ
それが俺の証
のジャージ
灰色と黒と白のジャージ
右肩にストレートのラインが入った
都内有名校のテニス部ジャージ
それがの証
うちのベランダにはその二つが並べて干されていたりする
先輩たちが知ったらどう思うのか
そんなことはどうでもいいけど
だって、関係ないし
「んで、青学の越前リョーマが何の用なん?」
関西弁、長い黒髪、眼鏡
俺はこんな人知らない
だけどは知っている
「別に。 ただ時間があったから散歩してただけだけど」
「ふぅん、そうなん? 俺はてっきりに会いに来たんかと思うたわ」
「・・・何で俺がに会いに来なきゃいけないわけ?」
あんな、大嫌いなに
目の前の男が口元を緩めて笑った
男らしい、どこか獰猛さを感じさせる笑い
の笑みと、どこか似ていた
「こんなところで会わなくても、家に帰れば嫌でも会うし」
日本に帰ってきてからは特に
テニスコートでと会うことはほとんどない
その周囲の環境でも同じく
俺は他人のプレーなんか見ないし
それはも同じだから
それ以前に見てはいけない
抜け出せなくなってしまうから
「せやな、嫌でも会えるんやしな」
・・・・・・・・・気に入らない、この男
余裕ぶった態度、わざとらしい言い回し
の態度と、どこか似ている
すごくすごく、気に入らない
「もう用はないし。俺、行くから」
「がいないんやったら意味もないしなぁ?」
―――――――うるさいよ
テニスコートではと会わない
ネットを挟んで打ち合ったことなんて一度や二度
互いのプレーをしてる姿さえ、望んでは見ない
少なくとも俺は
に奪われてしまうから
だから見ない
ただでさえ俺たちは同じなのに
そんなことをしたら
そうしたら、俺は
「やったら跡部と休憩中やで」
「・・・・・・聞いてない、そんなこと」
「でも知りたかったんやろ?」
どこで何をしてどう感じているのか
俺と同じ目をして何を見ているのか
俺と違う魂に何を刻んでいるのか
――――――――――気にならない、わけがない
俺とは唯一なのだから
「あぁでも、おまえはピアスしてへんのやな」
その言葉に反応して、思わず左手が耳元へ行こうと動く
宙で止まった不自然な指
けれど目の前の男は素知らぬ顔で話し続ける
「髪もよう見たらのほうがちょお長いし。違うところもあるんやな」
・・・・・・・・・だったら、何?
俺の耳には穴なんて開いてない
の耳には赤い宝石が光ってる
いつのまにか開いていたソレ
俺の耳には穴なんて開いてない
髪だってよりほんの数センチだけど短い
これだけが、俺との外見上の違い
これだけが、俺との違い
これだけが
こんなに
握り締めた手が痛い
震えるのは強く握り締めているから
絶対にそう
それ以外に何もない
どうして俺とは同じなんだろう
どうして俺とは異なるんだろう
俺と
世界を構成するすべて
俺の世界を構成するすべて
「ま、とおまえが似てるんはどうでもええわ。自身の問題やし」
だけの問題?
そんなわけ、ない
「で、一つ聞きたいんやけど」
これ以上何を言おうっていうの?
もういい、聞きたくない
なのに何で
「おまえはに嫌われたいんか好かれたいんか、どっちや?」
嫌いだよ、なんて
俺の知らないところで勝手に行動して
俺の知らないところで他人と仲良くなって
俺の知らない世界で生きるなんて
嫌いだよ
じゃあ俺は?
俺はに嫌われたいの?
それとも――――――――――
走ってその場から逃げた
あの男も追っては来なかった
俺は息が切れるまで走り続けて
逃げた
あの見透かすような視線から
心の奥底まで暴かれそうな声音から
あぁやっぱり
あの男、に似ている
俺の、
嫌いだよ、なんて
この気持ちは偽りなんかじゃない
本当に俺はが嫌いなんだ
憎んでさえいる
それなのに「嫌い」と言われると胸が苦しい
本当に、本当に、本当に嫌いなのに
こんなにも憎いと思うのに
それなのに心が縛り付けられて
俺はこの場から動けなくなる
に囚われて
嫌われたいんじゃない
好かれたいんじゃない
もっともっと違う感情を
俺はに求めてる
唯一つの存在に
この世のすべてを望んでいるんだ
2002年10月5日