あなたのことを、愛していました。
とてもとても、愛していました。
世界中の愛を、君に
真っ暗な廊下に金色の目玉が6つ。
通常なら2つであるはずなのに、なぜか三倍の数。
廊下を全てうめつくすほど巨大な三頭犬は黄色い牙をぎらつかせてハリーたちを見ていた。
今にも襲い掛かろうと唸り声を挙げて。
ダメだ、とそこにいた4人が思ったとき――――――。
『落ち着いて! 俺がカウントを数えるから0になったら後ろを向いて逃げるんだよ! 正面突き当りを左に曲がるんだ』
脳内に聞こえてきた声にますます頭は混乱する。
けれどどこか落ち着かせる声に四人は唾を飲み込んだ。
『いいね、行くよ。3・2・1――――――――――0! 走れ!』
一目散に駆け出した。
巨大な怪物が唸り声を響かせているのを後ろに聞きながら、必死の思いで足を動かす。
けれどドサッという音とともに少女の悲鳴が上がった。
「ネビル!」
「ハーマイオニー!」
ハリーとロンが振り返ると気絶して倒れこんでしまったネビルと、それにつまずいて転んでしまったハーマイオニーが見えた。
その後ろには首を伸ばして近づいてくる三頭犬。
大きな口が開かれて、真っ赤な舌と鋭い牙がちらつく。
杖を取り出す暇もない。
息を呑んだ。
「ペトリフィカストタルス、石になれ!」
涼やかな声が響いて、三頭犬の動作が音を立てて止まった。
石のように硬く、けれどその血走った目は先ほどとまるで変わらずに。
今すぐにでも再び飛びついてこられそうでハリーとロンは思わず後ずさった。
けれど真っ暗な廊下にコツン、と足音が落ちてきて身を固くする。
「ハァイ、ミス・グレンジャー。夜のお散歩はレディにとって危険だと思うけど?」
闇に溶けるような黒のローブをまとって現れた少年に三人は目を見張る。
その胸の紋章は自分たちと同じ赤と金色の獅子のもので。
ニッコリと微笑んだその顔は――――――――――。
「・・・ミスター・・・・・・・?」
信じられないようなハーマイオニーの言葉には穏やかに頷いた。
「ネビルは気絶しちゃったのか。まぁ仕方ないかな。ロン、ハリー、彼を運ぶのを手伝ってくれる?」
かけられた声に固まっていた二人はビクッと反応して、そして慌てて駆け寄ってくる。
「・・・・・・ミスター・、あなたどうしてこんなところに・・・・・・?」
「それは俺も聞きたいことだけど、話は後で。そろそろわんちゃんにかけた魔法が解けちゃうからね」
座り込んでいるハーマイオニーに手を貸して立ち上がらせると、先導するように先を歩き出す。
「出来るだけ足音を立てないように。ミセス・ノリスは耳がいいから」
石になったままの三頭犬をおいて、5人はその場から逃げ去った。
お出かけから帰ってきていた婦人に合言葉を言って5人は寮へと入った。
未だ気絶しているネビルをソファーに降ろして、みんな疲れたように座り込む。
「・・・・・・あんな怪物を学校の中に閉じ込めておくなんて、連中はいったい何を考えているんだろう」
やっと口を開いたロンにハーマイオニーが勢いよく言い返す。
「あなたたち、どこに目をつけてるの?あの犬が何の上に立ってたか、見なかったの?」
「床の上じゃない?」と答えるハリーを見ながら、はハーマイオニーの観察眼に感心していた。
(こりゃ真面目に警備をし直した方がいいかもな、アルバス。彼女は結構聡いみたいだよ)
「ミスター・は気づいたでしょう? あの犬が何の上に立っていたか」
急に矛先を向けられて、は面食らいながらも頷いた。
「ほら、やっぱり! 仕掛け扉の上に立ってたのよ。何かを守ってるに違いないわ」
憤慨した様子で、けれどハーマイオニーは肘掛け椅子に座りなおした。
ロンは信じられない様子でそれを見ていたが、は自分に向けられている視線に気づいて振り返る。
戸惑ったように揺れる緑色の瞳と、目が合った。
「・・・・・・は、何であんなところにいたの?」
ハリーの言葉にロンもハーマイオニーも振り向いた。
6つの目を興味深そうに向けられて、は小さく苦笑する。
「魔法史の教科書を取りに行ってたんだよ。明日までにレポート仕上げなきゃいけないのに、教室に忘れて来ちゃってさ」
ローブの中から教科書を一冊取り出してテーブルへと置いてみせる。
「それでバレないように帰ろうと思ってたら廊下を走る音がして。見てみたらミス・グレンジャーたちが逃げようとしてる。気になって跡をつけてみたら四階の禁じられた廊下に入っていくし。かなり驚いたよ」
「でも助かったわ。あのときの呪文ってまだ習ってないわよね?どこで覚えたの?」
「知り合いにホグワーツ出身者がいて、いろいろと教えてくれてたんだ」
「そうなんだ」
ロンとハーマイオニーが感心したように頷く。
けれどハリーはジッとを見ていた。
「何? ハリー」
尋ねると困惑したような表情で、ハリーが口を開いた。
「・・・・・・・・・僕とって、前にどこかで会ったことない・・・?」
思い出が、甦る。
2002年12月24日