XX.うつくしいひと





の後を継ぐわけではないけれど、雲雀は風紀委員長になった。
二年生ながらに学校を仕切り、そのまま学区までをも意のままにしている。
群れを嫌う彼はよりも暴力を良く振るったけれども、それで規律が守られているのも確かだった。
刃向かってくる骨のある者もいない退屈な日常が続いていた。
けれどそれもある日、一人の後輩と、その彼の連れている赤ん坊によって破られた。

「ねぇ、赤ん坊。君はイタリア・マフィアなんだって?」
漆黒のスーツ、それは雲雀の学ランとよく似ている。
それを纏っている赤ん坊からは、齢一歳だというのに硝煙の臭いがした。
飄々と頷く顔は、今はこの退屈な日常を変える楽しみの一つとなっている。
「あぁ、そうだぞ」
「ファミリーの名前は?」
「ボンゴレだ。それがどうかしたか?」
きょとんとした瞳で見上げくるが、雲雀は肩を竦めて窓から外を見下ろした。
眼下に広がる校庭では、沢田綱吉という貧弱そうな生徒が、イタリアからの転入生と野球部のエースの喧嘩を止めようとしている。
これが眼前の光景ならば、群れるなといってトンファーを振りかざしただろうけれど、今いる応接室からは届かないし、わざわざ出向いて彼らの相手をしようとも思わない。
皮の背もたれに体重を預けると、大きな椅子が音を立てた。
「・・・・・・ヴェレーノ・ファミリーって知ってる?」
「イタリアの中規模マフィアだな。ボンゴレには劣るが伝統と格式がある。去年ドンが代替わりして、新しい七代目は若いがかなりのやり手らしいぞ」
「へぇ・・・・・・」
どうやら跡目争いは、やはり無事に片付いたらしい。
その後は好き勝手やると言っていたから、ヴェレーノはこれからどんどん台頭していくことだろう。
きっとあの愛らしい美貌で、彼はイタリアを謳歌しているに違いない。
同時期に姿を消した、大貫と佐知川を引き連れて。
「知り合いか?」
「まぁね。勧誘されてるんだ」
「それは困るぞ。おまえにはボンゴレに入ってもらう予定だ」
「ワォ、引く手数多だね。どうしようかな」
楽しそうに肩を揺らす雲雀に、リボーンは表情の読みづらい顔で帽子のつばを引いた。
校庭からは、未来のドン・ボンゴレの悲鳴が聞こえる。



見上げる空、青く澄んで。
高らかに歌え、誇れ、そして戦え!
Gente bella! 美しい人たちよ!





2006年2月15日