04.気になってた、本当はずっと





ブレザーを脱ぎ捨て、学ランにも慣れ、風紀委員・雲雀恭弥が周囲に恐れられ始めた頃。
ふと疑問に思っていたことを、雲雀は何とはなしに口にした。
「・・・・・・あんたたちって、一体何なの」
独り言に近い呟きに、室内にいた彼以外の人物が二人、振り返る。
大柄な体躯を持つ男子生徒は名を大貫健史、眼鏡をかけた理知的な女生徒は佐知川真弓といった。

並盛中学だけでなく、学区すべてを支配化においている並盛風紀委員会。
その中にも当然ながら優劣が存在する。言わずもがな、頂点に座すのは委員長である
他を占めるのは素行の悪い不良や、雲雀のように一般生徒とは一線を隔する者。
けれどその中で大貫と佐知川という二人は異質だった。
大貫は大柄な体躯は他の委員たちと同じだけれど、その質が違う。彼のそれは喧嘩でなはく、武道を嗜んでいる鍛え抜かれた者の身体だ。
静かにに付き従い、の意思を的確に読み取り、の手足となって行動する。
風紀委員の多くと違い、大貫は委員会のために動かない。
「何、とは?」
問い返してくる大貫の手には、新たな紅茶の缶がある。それものためだろう。
職員会議からもうすぐ帰ってくる彼のために、カップを湯に浸して温めている。
「大貫君、きっと彼はこう聞いているのよ。『あなたたちは風紀委員らしくないですが、どうしてですか?』と」
かすかな微笑を浮かべている佐知川は、見た目は学級委員を務めるような真面目な雰囲気を持つ、美少女だ。
けれと彼女は以前に、雲雀を鞭で縛り上げるという所業をなしている。それだけでただの少女とは言えないだろう。
彼女もまた、委員会というよりはのために動いているよう、雲雀には見えた。
だからなのか、彼らは一委員である雲雀が応接室のソファーで寛いでいても何も言わない。それは少なくとも、雲雀がの気に入りということが多分に働いているのだろうけれど。
「確かに我々は、風紀委員というよりも様の私兵です」
私兵というのはケーキも手作りするものなのだろうか。大貫の手にあるアップルパイを眺め、雲雀は思う。
書類を作成していた佐知川もペンを置き、恍惚と頬を染めて微笑む。
様のために存在し、様のために尽くす。素晴らしいことでしょう?」
「・・・・・・どこが?」
「あなたもいずれ、判るようになるわ」
判りたくもないね、と雲雀は肩を竦めた。
放課後の応接室は、いつも芳しいアフタヌーンティーの香りで溢れている。



「あいつら? 下僕だけど」
優雅なティータイムを過ごすは、問われてきょとんとそう返した。
自身もそのカテゴリーに含まれていることを、雲雀は知らない。





2006年2月3日