気づけば、手遅れだった。
スカビオサ
笑って。
笑って。
笑って。
笑顔は時に武器に。
笑顔が時に防御に。
なることを、知っているから。
だから笑え。
欠片でも見せれば、彼女は気づく。
知られたくないのなら隠し通せ。
最初から、最後まで。
「リザさん、どうぞ」
笑え。
「俺、これからセントラルに行くんで、またしばらくお別れですね」
笑え。
「お仕事、無理なさらないで下さい。いくら大佐が仕事を滞納したとしても、リザさんが倒れちゃ意味ないから」
笑え。
「今度来るときは、ぜひ一緒に夕食でも食べましょう?」
笑え。
「ええ、約束」
・・・・・・笑え。
辛くても笑えばいい。
今までそうやって生きてきただろう?
苦しいなら笑えばいい。
今までそうやって耐えてきただろう?
笑って。
笑って。
こんな手では、彼女に触れられないから。
束の間の別れを告げて。
また会いに来るだろう自分に睥睨を寄越して。
温かい場所を、去る。
早くセントラルに行こう。
きっと自分にはあそこが相応しい。
両脚が音を立てて喜ぶから。
早く、行こう。
欲しいものがあるから、そのために人を傷つける。
それでも、願いが消えないから。
いつかはきっと、貴女の隣に。
望んでいるものを手に入れて、貴女の傍に。
今はそれだけを夢見て走り続ける。
鋼の両脚を、急き立てながら。
傷をつけて、走り続ける。
矛盾になんてとっくに気がついていた。
だけど、それを見ない振りした。
そうでないと、生きていけなかったから。
「・・・・・・・・・ごめんなさい」
謝罪は、誰に?
2003年12月12日