朝日が上がってくるのを感じながら、背を向けて街の中心へと戻る。
白の団はすべて潰した。命令通り、『殲滅』。
本拠地も、連絡拠点も、すべて綺麗に消してきた。
それは比喩ではなく、現実に。
両手を合わせて、消してきた。
「黒のコートなんか、に似合わねぇ」
「うん、僕もそう思うよ」
「・・・・・・西部に行くんじゃなかったっけ?」
赤いコートと鎧姿に、は呟いた。
朝日の見える場所へ
報告をするためにセントラルへと戻ってきた。
そして情報を貰って、そのまま奴らの跡を追って。
必ず探し出してみせると思ってた。
・・・・・・・・・たった、一人でも。
「情報はもう貰ったのか?」
「いや、これから」
「じゃあ待ってるからさっさとしろよ。昼発の列車だから」
「・・・・・・エド」
「席は当然3人分」
ニカッと笑ったエドに、が戸惑ったように瞳を揺らす。
一緒にいたくないだろうと思って、黙って出てきた。
軍の命令とはいえ、殺人を犯した自分と。
望みのためとはいえ、殺人を犯した自分と。
一緒に、いたくないだろうと思って。
「罪を犯したのは、俺たちだって一緒だ」
エドが、言う。
「俺だってまだ召集されてないだけで、命令されれば人だって殺さなきゃいけない」
「でも」
「俺はっ」
立ちあがって、と目線を同じにして。
鎧姿のアルフォンスも音を立てて立ちあがる。
朝日の、中。
「俺の見てきたを信じてる」
「・・・・・・・・・だから、いいんだ」
二人は、笑った。
昨日の朝早く、すでに隣の部屋が空になっているのに気づいて愕然とした。
会って何が言いたいとか、何を言えばいいのか、なんて判らなかったけれど。
でも何故かひどくショックだった。
が自分達のことを思って出て行ったとはいえ、切り捨てられたのだと感じてしまった。
自分達は、一体彼の何を見ていたのだろう。
出会って、話をして、息投合して。
そして、互いに罪人であることを知った。
手を合わせることによって錬金術を成すことの出来る者。
それは少なからず真理を見ている。
罪の証。
連帯感と傷の舐め合い?
違う。
この世のすべては等価交換できると信じていた。
けれど違った。
代えることの出来ないものは、必ず存在する。
それを理解して、受け入れて、諦めて生きてきた。
欲しいものだけを求めて。
だから知っている。
求めることの辛さを。
温かいものを捨てて、生きる悲しさを。
ならばそれだけで、十分だと思った。
「・・・・・・僕には兄さんがいたけど」
アルフォンスの少年の声が、鎧の中から響く。
「さんは今までずっと一人で頑張ってきたんだから、これからはもっと人を頼ってもいいと思うよ」
言われた言葉に思わず目を見開いた。
一人で生きてきて、それを当然だと思っていたから。
『頼る』なんて選択肢、浮かびもしなかった。
だってこの世は等価交換。
「俺らじゃ頼りないかもしれねーけどさ、旅は道連れ世は情けって言うしな」
「・・・それは何か違うよ、兄さん」
「そっか?」
話すエドとアルの姿を、はどこか呆然と見ていた。
何か、よく判らなくて頭の中がゴチャゴチャしてる。
「・・・・・・だって、俺とエドとアルは違う・・・」
「何が違うんだよ」
「・・・・・・俺は、人を殺した」
「だから? 軍人なんてそんなものだろ」
「でも俺は、自分の目的のために殺した」
「はそれを悪いことだと思ってるのか?」
言葉に、詰まる。
悪いことだなんて、思ってない。
申し訳ないとは思うけれど、それは『悪い』と思うこととは違う。
だって、自分で決めた。
誰にどんなに罵倒されても罪人でい続けることを、自分で決めた。
だから、誰にも受け入れてなんてもらえないと思ってた。
自分は、罪人だから。
「そんなに難しく考えるなよ」
エドが笑って拳を差し出す。罪を犯した証である、鋼の右手を。
アルフォンスも雰囲気だけで笑って、鎧の拳を差し出して。
「俺は、と一緒にいたい」
「僕も、さんと一緒にいたいよ」
・・・・・・・・・それだけで、十分。
は泣きそうになりながら笑った。
それは、今まで生きてきた中で一番幸せそうな笑顔だった。
拳を、ぶつける。
「俺も、おまえたちと一緒にいたい」
朝日の中で、『信頼』を得た。
幸せなんだと、思った。
2003年11月15日