<後日、約束どおり映画を観に行った男二人>
切なくロマンティックな恋愛映画を見た後で、僕たちは近くにあったカフェに入った。
そして僕は紅茶、はカフェラテを片手に話をしている。
というか、約束どおり僕がの愚痴を聞いている。
「だからさぁ、アレン! 俺は思うわけだよ!」
「はい」
「俺たち探索部隊はエクソシストに尽くすのが当たり前だし、常に意味不明な怪奇現象と隣り合わせだし、なのに給料は安いし!」
「はい」
「常に無線機を背負ってなきゃなんないから肩は凝るし、マッチョになりかけるし、なのに教団のローズクロスはもらえない!」
「え? そうなんですか?」
「そうなんだよ! だから探索部隊オンリーで出るときは交通費の領収書をもらって、後で経理部に申請しなきゃ給料から引かれるし!」
「大変なんですね・・・・・・」
「同僚はマッチョ系の男ばっか! そんな奴らと一年中一緒にいてみろ! 絶対気が狂うって辞めたくなるって!」
ダンッとカフェラテのカップをテーブルに叩きつけて、は言う。
周囲の人たちが少し振り向いたけれど、でもすぐに元に戻った。
「だけど俺が辞めないのは、教団本部に帰ればリナリーがいるからなんだよ! リナリーに会うために俺は安月給の探索部隊を続けてるし、アクマに遭遇しても何とか生きて帰ってきてるんだ!」
「・・・・・・はそんなにリナリーのことが好きなんですね」
探索部隊はイノセンスの適合者じゃないから、アクマと出会ったら逃げるだけでも大変なのに。
それなのにはちゃんと生きて本部に戻ってきてる。
本当にすごいと思っていると、はカップを握り締めて唇を尖らせた。
こういうところは、僕よりの方が一つ年上なのに何だか親近感を覚える。
言ったら怒られそうな気がするけれど、少し可愛い。
「だけどさぁ・・・・・・生きて帰ってくる度に、『次はないかも』って思うんだよ。だからせめて悔いの残らないように、思い出を作ろうとリナリーを映画やら買い物やらに誘うんだけど・・・・・・」
「・・・・・・まだ、ちゃんと誘えた試しがないんですね?」
こくんと頷くは、どこか哀愁が漂って見える。
それでもコムイさんに聞いたところによると、最初の頃はリナリーの名前を呼ぶことすら出来なかったらしいから、今はものすごい進歩をしているらしい。
・・・・・・でもきっとそれは進歩じゃない。努力だ、の。
「何でなんだろうなぁ・・・・・・・・・」
人々が楽しそうに歩いている平和な通りを、は眺める。
「何で俺、リナリーのこと誘えないんだろ・・・・・・」
それはまるで独白のように、ぽつりと。
「好きすぎるから、ダメなのかなぁ」
コムイさんには悪いけど、僕はの恋がうまくいけば良いと思う。
だって彼は、こんなにも優しいのだから。
早くがちゃんと誘えて、リナリーが笑顔でOKする日が来ますように。
カフェラテを片手に悩むを見ながら、僕はそんなことを願った。
2005年1月10日