兄さんに頼まれて資料を取りに行って戻ってきたら、ソファーの前の床でアレン君が丸くなって寝てた。
その手が誰かの手をぎゅっと握っているみたいだったから辿ってみると。
「・・・・・・・・・兄さん、さんが帰ってたなら教えてくれれば良かったのに!」
起こさないように小声で言うと、兄さんは年甲斐もなく頬をぷくっと膨らませて。
「だってリナリーってばが帰ってくるとにべったりだしー兄さんちょっとつまらないって言うかー?」
「しょ、しょうがないじゃない! だってさんは滅多に会えないしっ」
・・・・・・・・・私の、憧れの人なんだから。
憧れの人
アレン君がさんの左手を握り締めて眠ってる。いいな、羨ましい。
ラビはさんの上に丸々載ってるし。気持ちよさそう・・・・・・私も、男の子に生まれれば良かった。
そうすればさんとこういう風に触れ合って、たくさんお話も出来たかもしれないのに。
「このままじゃ風邪引いちゃう。兄さん、さんのコートは?」
「そこの棚にかかってるよ。そのチョコの山は教団へのお土産」
「そう。じゃあ後で配ってくるね」
本当はさんが行った方が、みんな―――特に女の人たち―――は喜ぶだろうけど。
ちょっとの嫉妬と優越感を覚えながら、無造作に置いてあったさんのコートを手に取る。
大きいそれは、私が着たらきっと裾が床に着いちゃいそう。
「・・・・・・リナ・・・?」
「あっ・・・・・・ごめんなさい、さん。起こしましたか?」
「いや・・・・・・」
目を擦る彼は、どことなく幼くて可愛い。年上の男の人にこんな言葉、褒め言葉じゃないかもしれないけど。
そこでさんは左手を動かそうとして、その手がアレン君に握られているのに気付いたみたい。
視線をソファーの下の彼に巡らせて、次に自分の上に載っているラビを確認して、そしてまたアレン君を見やって。
「・・・・・・一匹増えてる・・・」
「アレン君です。クロス元帥の弟子の」
「あぁ・・・・・・そういや、あいつ何か言ってたっけ・・・・・・」
ピクリと机の方で兄さんが反応した。
さんもクロス元帥も教団に連絡を入れないことで有名だけど、お互いでは遣り取りがあるんだ。
じゃあどちらかを捕まえておけば、もう片方も捕まるのかも。
私と同じことを考えたのか、後ろで兄さんが何だか楽しそうに笑ってる・・・・・・。
まだぼんやりとしているさんの右手が動いて、私の持ってるコートを指差す。
「・・・・・・ポケット・・・リナに、土産・・・」
「えっ!?」
慌ててポケットを探ると、小さな箱が出てきた。
白い掌サイズで、ピンク色のリボンがかけてある。
「たいしたもんじゃなくて・・・・・・ごめんな・・・」
それだけ言うと、さんはまた眠ってしまった。
震えそうになる手で、その身体にコートをかける。
ラビが完全に隠れちゃったけど、そんなの気にしていられなかった。
手の中のプレゼントだけで、気持ちがいっぱいで。
「よかったね、リナリー」
「・・・・・・うん」
兄さんが優しく笑う。
丁寧に丁寧にラッピングを解いた中からは、花をあしらった可愛いネックレスが顔を出した。
2005年9月23日