07.幻プリンセス
再び降り立った日本は、やはり形も色も様々な建物が並んでいる。千種と犬に金を渡し、先にホテルへ向かうようは告げた。ちなみにスイートではなく普通の部屋を四つ取っておくよう言い含めるのは忘れない。そしては電車とバスを乗り継ぎ、骸の言っていた病院へと向かった。
凪という少女の病室は、看護婦に尋ねればすぐにわかった。彼女は右目と内蔵を失い重傷であることに加え、運び込まれたときにしか両親が来ていないこと、そのときに夫婦が言い争いをしていたことなどで有名らしい。まだ黒曜中の学ランを脱いでいなかったは「クラスメイト?」と尋ねられ、曖昧に笑い返した。
集中治療室の硝子越し、少女の平凡さには呆れる。この場合の非凡とは、戦えるとか特殊能力持ちとかマフィアとかを指すのであって、一般人はすべて平凡にカテゴライズされる。骸が契約することなく憑依出来ると聞いていたから、一体どんな子だろうと想像していたのだけれど。
横たわっていた少女が起き上がり、ついてくる呼吸マスクや点滴の管を外す。その際に少しだけ歪められた眉が新鮮で、は笑みを浮かべながらコンコンと硝子をノックした。気づいた凪がこちらを向く。左目しかない彼女は、シンクロ率の高いせいか、骸を連想させて止まない。扉を開けて、は中へ入る。
「Ciao Bella! これが洋服。俺の好みで申し訳ないけど」
「・・・・・・いえ、ありがとうございます」
「外で待ってるから着替えたら出てきて。両親への連絡は?」
「手紙、書きました。だから平気です」
「Vabbe'. 俺は。六道さんのビジネスパートナー」
「骸様から聞いてます。凪です。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる少女は、長い黒髪に黒い瞳をしており、の想像する日本人女性そのままという感じだった。うん、これは役得、とは内心で骸を褒めたたえる。
十数分後、見回りに来た看護婦はもぬけの空になっているベッドを発見する。そこには凪の筆跡で書かれた手紙だけが残されていた。
日本人の女の子って可愛いよな。えっと、ヤマトナデシコ?
2007年7月28日