DYE

25:再誕祭





立っている位置が違うのだから、主張することは当然違う。
だけどそれは、どちらも間違っていない。
だって彼らは他人なのだから。



同じ未来は見れない。



「俺は他人の命令で死んだりなんかしない。殺したいのなら来いよ。相手してやる」
軽く言いながら、は自分の心が渦を巻き始めているのに気づいていた。
手の平で転がされているような感覚に吐き気がする。
何もかも滅してやりたい。そんな気分になってくる。
「どうせ俺が殺した死神の知り合いもいるんだろ? 俺が憎いならかかってくれば? そっちの方が一方的に死刑を言いつけられるより頷ける」
視界の隅で、拳が握られた。
は気づいて振り返り、両の腕を広げてみせる。
眼鏡をかけた男が、険しい顔をしてを睨む。
「あんたは、どの死神の関係者? まぁ名前なんか言われても判んないけど。だって俺、今まで沢山の死神を殺してきたし」
「・・・・・・・・・君は、心を痛めたりしないのか?」
「逆に聞くけど、あんたは虚を斬るときに『心を痛める』のか? 俺にとっては虚も死神も関係ない。俺を殺そうとするんだから、そいつは俺の敵だ」
「雛森君に・・・・・・敵意はなかった」
「嘘だな。俺の目の前に現れる死神は、一人残らず殺意を持ってたぜ」
「彼女はただ、山上君のことを悲しんでいただけなんだ」
「ヤマガミクンが殺されて悲しいから、ヒナモリクンは俺を殺しに来た。これがヒナモリクンの言い分」
「・・・・・・・・・」
「そして俺は相手が殺意を持っていたから、逆に殺した。これが俺の言い分」
「・・・・・・・・・」
「立場が違うから意見は合わない。和解は成立しないな」



「そうじゃ。だからこそ、おぬしには死んでもらわねばならぬ」



は声の主を振り返った。
その眉間には皺が寄っており、いい加減に不愉快が表情に現れている。
もう一度同じことを繰り返そうとが口を開くと、それを山本が遮った。





「おぬしには現世で死して、死神として生まれ変わってもらう」





2004年12月18日