DYE
22:護廷十三隊
嫌な夢を見た後だからなのか。
無駄なことを言ったり、したりするような気力はなかった。
左右に並んでいる死神たちを、一人一人個別に認識する気力もない。
ただ、示されるままに前に進んだ。
向けられる視線は徹底的に無視をして。
「お初にお目にかかるのう、」
年老いた男の声に、ただ無愛想に頷いた。
「紹介しよう。我らが護廷十三隊を」
皮と骨のような手が、ゆっくりと上がり方向を示す。
から見て右側の、一番老人に近い位置。
「二番隊隊長、砕蜂」
小柄な黒髪の女。
目が合ったけれど互いに何を言うまでもなく逸らした。
「三番隊隊長、市丸ギン」
細い目の、細身の男。
ひらひらと笑顔で手を振られて、思わず片眉を上げた。
「四番隊隊長、卯ノ花烈」
微笑を浮かべた髪の長い女。
緩やかに一礼され、同じように少しだけ頭を下げた。
「五番隊隊長、藍染総右介」
眼鏡をかけた男。
一礼されるときに向けられた視線は鋭く、肩を竦めた。
「六番隊隊長、朽木白哉」
端正な顔立ちの男。
感情のない目線は上げられることもなく、綺麗に無視した。
次に向けられた手は、から見て左側に移る。
「七番隊隊長、狗村左陣」
大柄すぎるほど大柄な男。
まるで置物のように微動だにしない相手を、見上げた。
「八番隊隊長、京楽春水」
派手な羽織と笠の男。
にこりと笑みを向けられ、一つ軽く頷いた。
「九番隊隊長、東仙要」
色黒の男。
礼儀正しく頭を下げられ、同じように一礼を返した。
「十番隊隊長、日番谷冬獅郎」
子供にしか見えない男。
鋭い視線を向けられて、笑みながら首を傾げた。
「十一番隊隊長、更木剣八」
体格の良い隻眼の男。
よぉ、と挨拶されて、同じように笑って手を挙げた。
「十二番隊隊長、涅マユリ」
外見から判断できない。
ロボットのような目を向けられ、眉を顰めた。
「十三番隊隊長の浮竹十四郎は、身体が弱くてのう。本日は欠席じゃ」
そして最後に老人は名乗る。
「わしは一番隊隊長にして護廷十三隊総隊長。山本元柳斎重国じゃ」
髭の立派な男。
まっすぐな眼差しを受け止めて、口を開く。
「俺は。人間。どうぞよろしく」
二十一の目を向けられた中での挨拶は、震えることなく、むしろ堂々たるものだった。
護廷十三隊の隊長格らは、まるで見定めるみたいにに視線を向けている。
2004年12月5日