DYE
18:開ける光
穿界門が開かれたのを、浦原は感じた。
弾かれるように空を見上げる。肌が震え、心臓が大きく音を立てる。
しばらくそのまま、身動ぎもせずに。
ただ・・・・・・堪えて。
そしてようやく、ふっと身を弛ませた。
帽子を深く被り直し、緩慢な動作で唇の端を上げる。
それは、少し歪んだものになってしまったけれど。
「・・・・・・・・・いってらっしゃい、サン」
からん、と下駄が音を奏でた。
日番谷が現した門は、先日瀕死にした女の死神が出したのと似たようなものだった。
潜る際に重力がかかるような負荷を感じたが、それも歩いているうちに慣れてくる。
むしろ身体が軽くなっていくような感じさえ覚えていった。
「そーる・そさえてぃ?」
当てはめる漢字が判らず、平仮名でが呟く。
「尸魂界だよ、ちゃん!」
「死神」
「死神!」
「るこんがい」
「流魂街!」
「ごてい十三隊?」
「十三隊!」
「更木」
「剣ちゃん!」
「ひつがや」
「日番谷とーしろー!」
「・・・・・・冬獅郎だ」
「やちる」
「やちる!」
まるで言葉遊びのような会話を、とやちるは繰り返す。
自分の敬愛する更木を満足させるに足る相手だと認めたのか、やちるはにすぐに懐いた。
今も要領を得ないながらも尸魂界のことを説明している。
「つまり、ソール・ソサエティには死神とそれ以外の人間がいる。その差は、霊力を使えるか否か」
内容を整理するようにが繰り返せば、更木の背中でやちるが嬉しそうに頷いた。
「死神はゴテイ十三隊っていう部隊に分かれていて、更木は十一番隊の隊長。やちるは副隊長。日番谷は十番隊の隊長」
あぁ、と更木が答える。
「死神の仕事は現世とソール・ソサティの魂の数を均等に保つこと。つーことは、アレか。世界の人口は廻り廻って総勢120億人ってことか」
地球の人口が約60億人で、それと同じ数が常にソウル・ソサエティにもいるんだからそういうことだよな。
は一人で呟き、新たな事実を受け入れるように頷く。
「で、俺は食われると虚が強くなって困るし、生きてるだけでも虚に狙われて、逆に消滅させるから困る。うわ、八方塞じゃん。どうすんの?」
「・・・・・・それをこれから諮るんだろうが」
「始末処分にならないことを祈るよ」
軽口のような言葉に、日番谷はちらりとへ視線を走らせた。
けれどすぐに前を向き、歩を進める。
眩しい光が開けるその先。
尸魂界が見えてくる。
2004年11月20日