DYE
12:バースデイ
生まれたときから人じゃないものが見えた。
そのせいで親に捨てられ、孤児院で育てられた。
けれど見えないはずの物が見えるは、年を重ねても変わらない。
むしろより一層クリアになっていくそれに、気味が悪いと言われて子供は孤児院も転々とたらい回しにされた。
けれど彼は幼いながらに判っていた。
自分は異質なのだから、仕方がないのだと。
「一番最初に死神を殺したのは何時っすか?」
問いかけてくる下駄と帽子の男は、どこか赤い血を持つ化け物と同じ臭いがする。
赤い血を持つ化け物―――死神と。
「15年前。俺を殺そうとしたから殺した」
「・・・・・・アナタ、今年で16ですよねぇ?」
「俺はハイハイするのと同じようにこの力を使うことが出来た。生まれたときから」
手の平に意識を集めれば、すぐさま集められた力が輝きだす。
浦原と夜一はそれを目を細めて見定め、これなら無理はないと思う。
これだけの力があれば死神くらい軽く殺せる。それはもう簡単に。
「まだ赤ん坊だった俺に力があるのを、そいつは気づいた。邪魔だったのか何なのか知らないけど、俺を殺そうとした。だから殺した」
輝きを消して、はグーパーを繰り返す。
「黙って殺されるほど俺は無気力な人間じゃないし、殺されるくらいなら殺した方がいいと思って」
そう思って、今までずっと殺してきた。
死神も、虚という胸に穴の開いた化け物も。
自分以外の誰にも見えていないのなら、殺したって構わないだろう。
少なくとも罪には問われない。
そう思って、殺した。
いつしか、自分にだけ見えるものは全て敵なのだと思うようになっていた。
だって味方なんかいないんだから。
闇夜の月。
雲がかかることなく照らされるそれに、浮かび上がる二つの影。
チリンと涼やかな音色が、静かな夜の街に響く。
「楽しみだね、剣ちゃん」
明るい少女の声に鈴がもう一度チリンと鳴った。
だって、生まれたときから味方なんかいないんだから。
2004年10月30日