DYE

02:悲鳴が聞こえる、君の





「連絡が取れない?」
藍染惣右介によって繰り返された言葉に、雛森桃はこくりと首を縦に振った。
手の中にある携帯電話にも似た機械は、死神である彼らの必需品。
尸魂界からの指令を受け取り、虚の居場所を確定できるそれは、死神同士の連絡を取り合う手段でもあった。
それが今、ウンともスンとも言わないことに、雛森は不安を覚えていた。
「・・・・・・第七席の山上君か。いつから?」
「・・・・・・もう、丸三日です」
「そうか」
藍染が考え込むようにして、目を伏せる。
雛森はそれをただ心配そうな眼差しで見上げていた。
彼ら死神は現世を区画に区切って、それぞれに担当の死神を一人ずつ配置している。
だから虚や何だと忙しければ、尸魂界ではなく現世に入り浸りになってしまうことも少なくない。
けれど護廷十三隊の一つ、藍染の率いる五番隊では、隊員たちの連絡が途絶えるということはほとんどなかった。
それはおそらく隊長である藍染と、副隊長である雛森の几帳面な性格が隊にも移っていたからだろう。
少なくとも一日に一度は伝令神機を使って連絡を取り合うのが常だった。
―――それなのに。
悪い予感が頭から離れなくて俯いた雛森の肩に、藍染が優しく手を載せる。
弾かれたように顔を上げるのに、穏やかに微笑んで。
「大丈夫。彼もきっと忙しくて忘れているだけだよ」
「・・・・・・藍染、隊長」
「今日中に僕も連絡を入れておくから、それでも返事が来ないようだったら彼の区画に行ってみよう」
「―――はい」
雛森は唇を噛んで頷いた。
最も信頼している藍染に諭されても、何故か胸の中に広がる暗雲が消えない。
それどころかますます酷くなっていって。
得も知れない不安が、忍び寄ってくる。





悲鳴が聞こえる、君の。





2004年10月3日