「す、好きです!」
それだけ言って、桃は真っ赤な顔で俯いた。
握り締めた拳が制服の袴の上で震えていた。
01:明日も会える?
真央霊術院の裏にあたる、人気のない場所。
そこで今、雛森桃は想いを告げていた。
入学してから半年、ずっと好きだった。
四つ上の五年生。
、先輩。
出会ったのは春に行われた上級生による指導の日。
好きになったのはその次の日。
だけどすぐに告白できるわけもなかった。
だって、相手は先輩で。
貴族、という肩書きを持っていて。
成績だって主席で。
来年六年生になったら、きっと護廷隊への入隊も決まるだろうと言われていて。
評判は、本当に派手だけれど。
でも、本人はとても穏やかな性格をしていた。
だから桃は好きになった。
学院の廊下で、擦れ違うたびに嬉しくなる。
目が合えば真っ赤になってしまって、けれど逸らせなくて。
柔らかな笑みを向けられると、会釈を返すだけで精一杯。
声が聞けると嬉しくて。
話なんて、出来なくて。
隣を歩く自分を想像するのが恥ずかしくて、けれど望んでた。
どんどん好きが溢れてきて止まらない。
恋はだんだん、深く望みを帯びてきて。
好きになって欲しいと、思うようになっていた。
一歩踏み出すには、自分を見てもらうには、この想いを告げるしかない。
桃はそう思って、告白に踏み切った。
だけどこうして言ってしまえば、後悔がすぐに襲ってきて。
続く沈黙に、目の奥がツンと痛んで。
浮かんでくる涙を零さないように必死で堪えた。
袴をきつく握って、歯を食いしばったとき。
「・・・・・・・・・本当に・・・?」
落ちてきた呟きに、反射的に顔を上げた。
目に入ってきたのは、真っ赤な顔をした想い人。
桃は口を開きかけて、でも言葉が出なくて。
だけど心に任せて言い募った。
「ほ、本当です! あたし、春からずっと先輩のことが好きで、ずっと見ていて・・・・・・っ」
言いたいことがいっぱいあって。
もしかしたら、と浮かんできてしまう期待に胸が膨らんで。
頬が熱を持って、身体が熱くなる。
「あの、だから・・・・・・!」
「―――うん」
穏やかな笑みは、桃の大好きなもの。
派手ではなく、けれど整った顔立ちを今は真っ赤にしている。
そんな彼を、この状況なのに可愛いなんて思ってしまった。
「先、越されちゃったな・・・」
「・・・・・・え・・・?」
「本当は、護廷入隊が決まってから言いたかったんだけど」
告白が、耳に届く。
「俺も、君が好きです。よければ俺と付き合って下さい」
心に届いた言葉は、俄かには信じられなくて。
視界の中で、が照れたように微笑む。
繋いでみたいと思っていた手が、触れたらどうなるんだろうと考えていた唇を覆って。
本当に、嬉しそうに笑うから。
真実だと伝わってくる。
「・・・・・・よろしくお願いします・・・っ」
勢いよく頭を下げた桃を、愛しそうに見やって。
そしても頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
伝わった想い。
明日も、会える。
2004年7月24日