柳生へ。久しぶりに手紙なんか寄越すから、何があったのかと心配になったぜよ。心臓に悪いことはやめんしゃい。おまんが選んだ道は間違っとらんと思うナリ。将来を見越して自分でレールをしけるとこ、尊敬しとる。でもわがままを言うのは子供の特権ぜよ。中学に入ってからピアノを再開したい言うたら、柳生の親は喜ぶんじゃなか? テニス部に入ったら、そんなひまはあるか分からんけどのう。おまんのピアノ、俺も好きじゃから残念ナリ。でもまぁ、これからは発表会もない分、俺のために弾きんしゃい。独り占めじゃ。俺は中学はどこに通うかまだ分からん。香川にもいつまでいれるか分からんしのう。本当に、この転勤族はどうにかしてほしいぜよ。決まったら連絡する。受験、頑張りんしゃい。柳生のことじゃから当然のように受かるじゃろうけど、無理はせんように。ぐちだったらいくらでも聞いちゃるき、覚えときんしゃい。
小学校六年生、秋。
2010年10月23日