<女子による猿野天国トーク>





場所は報道部部室(施錠済み)。
集まっているのは15人くらいの女子生徒。



「本日は忙しいところお集まり頂きまして恐縮ですわ」
「前置きはいいからよ、何の用なんだ?」
「そうですわね、清熊さんの言うとおり時間が惜しいですわ。とにかくこれを聞いてくださいませ」  



『―――というわけで、僕らのチェリオ君が大変な危機に晒されているんだ!』
『猿野の魅力に女子が気づき始めてるっちゃ』
『これは早急に手を打たねばなりませんね』
『・・・・・・・・・とりあえず、女は嫌いだ』
『そんなことより早く対策を立てるのだ!』
延々と続く話し声。



「これは・・・・・・」(小さな声で驚きを露にした女生徒。1年8組所属でフワフワの可愛らしい雰囲気と容姿が男子生徒に人気である。性格も大人しめで控えめ)
「現在の野球部の部室で行われている会話ですわ。参加メンバーはいつもお知らせしている通り、猿野君を狙っている人たちばかりです」
「この盗聴器をつけたのは誰?」(茶色い髪にきっちりメイクした女生徒。2年1組所属でギャル系ではあるがやるときはやることから一目置かれている)
「清熊さんと猫湖さんに協力して頂きましたの。いつ何時猿野君が危険に晒されるとも限りませんから」
「それで?『猿野天国を汚らわしい男から守ろう』の会長である梅星さんはどう考えるわけ?」(黒髪をサラリとかきあげた女生徒。3年4組所属で大人っぽい雰囲気と容姿で高嶺の花と男子生徒から憧れられている)
「もちろん、こんな暴挙は許せませんわ」
「確かに・・・・・・私たちより、この人たちの方が邪魔・・・・・・かも」
「何が『女子の魔の手から天国を守ろう』ですか。それを言うのなら下心満載の貴方たちの方がよっぽど危険ですわ!」
「じゃあ、私たちも打って出るということですか?」(メガネをかけた女生徒。2年5組所属で生徒会でも会計を務める。理知的な雰囲気から生徒だけでなく教師の間でも信頼されている)
「そうですわね。けれどあくまでも猿野君に危害が加えられないように。私たちが第一に考えることはそれですわ」
「男どもを片付けるのは二の次ってことか」
「とにかく猿野君は自分たちのものだと思っている野球部の面々にしっかり現実を叩き込むことから始めましょう。これはあるデータに基づき分析されたものです。皆様それぞれ相手の名前が書いてあると思いますが、それは皆様が倒すのにもっとも相応しい人の名前ですわ」
「手腕は問わないんだね?」(赤いピアスを光らせた女生徒。3年8組所属で授業をサボったり態度は悪くケンカなども強いが、芯は優しく容姿も美しい)
「もちろんですわ。皆様にお任せします」
「このデータはどこから手に入れたんですか?」(手を上げて発言した女生徒。1年9組所属でいたって普通の子ではあるが、明るい性格でクラスでも人気である)
「猿野君に最も近しい人から・・・と言えばお分かり頂けるでしょうか」
「「「「「もちろん」」」」」
「それでは皆様、お互い頑張りましょう」



きつく手が結ばれた。
男VS女の図式がここに完成される。
高みの見物を決め込むのはどうやら本人とその親友のみらしい。
はたしてどちらが勝つのだろうか。勝負はまだ判らない。





2002年9月2日