<三年軍による猿野天国トーク>





「・・・・・・知ってるかい?鹿目君、蛇神君」
「何なのだ?」
「どうかしたのか、牛尾」



僕の愛しいチェリオ君がOLらしき女性と極めて親しい関係にあるということを。



「・・・・・・その情報、どこから仕入れたのだ?」(『僕の』というところには多大な反論を試みたいところだが、内容が内容なのでそちらを優先したらしい)
「先週の金曜日の夜に予備校の帰り道でチェリオ君がその女性の車から降りてくるところに偶然出会わせてしまってね・・・」
「だからと言って『極めて親しい関係』とは判らない也」
「チェリオ君がね、その女性の髪に触れたんだよ。何というか雰囲気だけで判ってしまってね。きっと肉体的な関係にあると思うんだ・・・・・・」(影を背負い込む。3年4組の教室はブラックホールに飲み込まれた)
「・・・・・・・・・」(牛尾がこれほどまでに動揺するとは猿野天国恐るべし、とか思っている)
「・・・・・・・・・」(暗くてウザイから始末するべきなのだ。今殺ればライバルが一人少なくなって一石二鳥なのだ、とか思ってる)
「・・・・・・僕のチェリオ君が・・・」(さめざめと泣き始める。3年4組の教室はインド洋の底に沈んだ)
「・・・・・・」(いい加減本気でウザくなってきたらしく、鞄を漁り始める)
「それでは猿野とその女性は恋人関係にあるということになる也」
「それはないと思うのだ。あの猿野が一人に縛られるタイプだと思うのか?」(鞄の中で手にしたウージー9ミリサブマシンガンを離す)
「否。しかし・・・・・・」
「わかった!きっとチェリオ君は僕に焼きもちを焼かそうとしたんだね!そんなことしなくても僕は君一人だけを愛しているのに・・・。可愛いね、チェリオ君・・・」(キラキラと3年4組の教室は目映い太陽の光に照らされる。ちなみに本日の天気は曇り)
「・・・・・・」(呪詛が紡がれ始める。周囲に霊魂が漂い、どんどん数を増していく)
「・・・バカは殺さなきゃ直らないのだ」(マシンガンに弾が装填されているのを確認する。左手のグローブの中にはパイナップルに似た形状の武器が)
「でもチェリオ君が年上の女性と交際があるなんてね・・・」
「特に不可思議な現象でもない也」(数珠がまだ妙な音をたてて鳴っている)
「猿野は綺麗だし可愛いし年上に好かれるタイプなのだ」(制服のズボンの後ろにコルトパイソンを差し込む)
「ああ、それはわかっているよ。けれどチェリオ君がたとえ僕に焼きもちを焼かせる為であっても他の人と関係を持つなんて苦しくて・・・」
「・・・・・・」(指に挟んだ御札を中心に闇が形成される。指差す先には自分の世界にはまり込んでため息をついている牛尾)
「クスクス。地獄で勝手に妄想すればいいのだ」(ガシャンとマシンガンを構える。学ランの裏側には軍用ナイフも仕込んである)
「・・・僕のチェリオ君・・・・・・!」
攻撃開始。



「キャプテン!鹿目先輩!蛇神先輩!大変だっちゃ!!」
「・・・」(舌打ちが聞こえ、闇が薄っすらと姿を消す)
「何なのだ?猪里」(せっかく牛尾を殺るチャンスだったのに無駄にしやがって、とか思って睨む)
「猿野のことに関してばいッ!!」
「放課後部室に集合でいいかな?」(カムバック&キャプスマ)



こうして役者は全員出揃った。
いないのは当の本人と一番近しい者、そしてマネージャー陣。
その人物たちが何よりも重要であることに気づいている者は果たしているのだろうか。





2002年8月30日