<山口圭介生誕記念>





俺の誕生日。
結局真田からの電話はなかった。
これって、やっぱり、フラれたんだよな。
本当に好きだったのに。
今でも、好きなのに。



「圭介」
「・・・何だよ、姉貴」
「電話、アンタに」



渡された子機。手に感じる重み。心の痛み。
あぁ、泣きそう。
「はい、お電話代わりました・・・」



『・・・・・・・・・山口・・・・・・?』



聞こえた、声。



「さなだ・・・・・・?」



信じられないという思いと
胸が苦しくなる痛みと
泣きそうな切なさに
シーツを強く握り締めた



「なん、で・・・・・・」
『・・・・・・だって、昨日』



頼りない声
どちらのもの



「終わっちゃったよ・・・・・・」
『・・・・・・・・・』
「俺の誕生日・・・もう終わったんだよ・・・・・・」
『・・・・・・・・・』
「待ってたんだぜ、俺。真田からの電話、ずーっと」



電波越しでよかった。
今の自分はきっとものすごく情けない顔をしてるから。
君に見られなくて良かった。



『だっ、て』
「フラれるのは判ってたけどさ、やっぱり真田の口から言われたかったから。だから、待ってた」
『・・・・・・・・・』
「でも、もう、いいから」



聞きたかったんだ、君のその声で
ただ一言
最後に



『・・・・・・・・・』
「ありがと、真田。俺、おまえを好きになってよかった」



すきになってよかった
くるしくてもせつなくても
きみをすきでよかった



『・・・・・・んだよそれ・・・』
「・・・・・・・・・」
『・・・・・・んだよソレッ!!俺はッ・・・!』
「もう、いいから」
『・・・・・・・・ッ』



くるしむだけのこいでもよかったんだ



『・・・勝手に終わらすなよ!じゃあ俺はッ・・・俺はどうすればいいんだよッ!!』
「・・・・・・さなだ・・・?」
『好きになれると思ったのにッ!おまえならきっと好きになれると思ったのに・・・!!』
「さな、」
『おまえなら・・・・・・待っててくれると、思ったのに・・・』



泣きそうな声
どちらのもの



「・・・・・・それ、ほんと?」
『・・・・・・・・・』
「な、真田。ホント?」
『・・・・・・・・・』
「俺、真田が好きだ。誰よりも、世界で一番好きだ。本当に、すきなんだ」
『・・・・・・・・・』
「だから俺を好きになって。ゆっくりでいいから、俺、いくらでも待つから。真田のこと、待つから。だから」
『・・・・・・・・・』



俺のことを好きになって下さい



『・・・バカ・・・・・・』
「うん」
『ホントにバカだ』
「うん」
『だって、おまえだって俺の誕生日一日遅れたじゃんか。だから』
「うん。本当にゴメン」
『・・・・・・・・・』
「だから言って。お願いだから、・・・・・・・・・一馬」



聞きたかった言葉を



『誕生日おめでとう・・・・・・・・・けい、すけ』





2002年10月11日