<山口圭介生誕記念>





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こない。



もう夜も11時を過ぎた。
ケータイは何度もメールや着信を知らせてくれたけど、一番かかってきて欲しい人からは未だ来ず。
圭介はガックリとうな垂れた。



「・・・・・・・・・やっぱフラれたのかなー・・・」



脳裏に浮かぶのは愛しい人の顔。
約二ヶ月前にあった彼の誕生日に電話して想いを告げた。
今日はその答えをもらえるはずだったのだけれど。



「あーぁ」



泣きそうなため息も気にせずに、時計は無常に針を刻む。
それでも鳴らない携帯電話。
ベッドに転がりながらも放せずにはいられない。



だって、本当に好きなんだ。



初めて会ったときから
サッカーの試合で対戦したときから
シュートを決めた彼の笑顔を見たときから
ずっとずっと想って来た
笑う顔も怒る顔も泣く顔も
全部見たいと思うから



だから告げた
断られるのを判っていて



「真田ぁ・・・・・・」



彼が自分のことを特別に想っていないことくらい判っていた。
けれどどうしても止められなくて。
近くにいれない自分はただでさえ不利なのに。
想う気持ちは止まらなくて。



気がつけばこんなにも大きくなっていた彼への想い



きっと親友二人にでも相談して、「やめろ」とでも言われたのだろう。
あの二人は彼に近づく輩には容赦がないから。
それほどまでに守りたいのか。
それほどまでに傍にいて欲しいのか。
想う気持ちは同じなのに。



離れている悔しさに胸が軋む



すきなんだすきなんだすきなんだ
こんなにもさなだのことがすきなんだ
だからせめてこえだけでもきかせてほしい
ひとことだけでいいから
そのこえでことわってくれるのならそれでいいから
だから



圭介は泣きそうな顔で携帯を握り締めた。
答えのない問いを抱いて。



『俺、真田が好きだ』



それからいくら待っても、携帯電話は鳴らなかった。





2002年10月10日