<山口圭介生誕記念>





どうしよう・・・・・・。



ついに来てしまった。
明日は10月10日、旧体育の日。
そして山口圭介の誕生日である。
山口圭介といえば、浮かんでくるのは約二ヶ月近く前にあった自分の誕生日。
電話越しに聞こえた声。



『俺、真田が好きだ』



今思い出しても顔が赤くなる。
真剣な声、しばらく会っていない間に少し低くなっていた。
そんな声で告げられて。



「俺にどうしろって言うんだよ・・・」



『俺の誕生日10月10日だからよろしく!』
一度切れた後、もう一度かかってきた電話。
そうして告げられた執行猶予。
それも今日で終わり。



「・・・・・・・・・」



クシャリと髪をかき混ぜる。
このことは誰にも話していない。
親友の二人にも、親友だからこそ話せなかった。
大事なのは結局一馬自身の気持ち。
そうなのだとわかっていたから。



携帯電話を手にとって、電話帳で下から探していく。
すぐに見つかった名前。
『山口圭介』



好きかと聞かれれば好きなのだと思う。
けれどそれは恋愛の好きなのかと尋ねられたら、すぐに頷くことは出来ない。
曖昧な境界線。



あと少しで日付がかわる。
待っているかもしれない。
待っていないかもしれない。
与えられた時間はもうわずか。



一馬は泣きそうな顔で携帯を握り締めた。
見つからない答えを探して。



『誕生日おめでとう』



その一言さえ言えるかわからなかった。





2002年10月9日