07:文化祭





今日は野上ヶ丘中の文化祭だ。
っつっても公立中学の文化祭じゃ飲食屋台なんか出せないし、展示かステージだけ。つまんねーの。
早く高校生になりたい。そうすりゃもっと行事とかも派手に出来んのに。
「久保、おまえ二時から当番だろ?」
「あ? あぁ、そっか」
言われてようやく思い出した。そういや二時から俺、クラスの当番だっけ。
どうせクラスなんて大したもの展示してないんだから見張りなんていらねーと思うけど。
まぁいいか、たった30分だ。
誰と一緒かと思って当番表をポケットから引っ張り出して見る。
それを眺めてて、俺はあることに気づいた。
「・・・・・・なぁ、何で真田って当番に入ってねーの?」
同じクラスのヤツ。真田一馬。
今は俺の前の席に座ってる。
その真田の名前が当番に入ってなくて首を傾げたら、隣の渡辺が答えた。
「あぁ、真田は今日は休みだぜ」
「休み? 文化祭なのにか?」
「この金・土・日はクラブの遠征で九州に行ってるんだってさ」
「マジで?」
九州か。アレだよな、九州っていったらラーメン?
後は何だ? サツマイモとか温泉とかか? よくわかんねぇ。
「真田、当番出来ない代わりに準備とか結構してたじゃん。クラブのない日だけだけど」
「あー・・・・・・そういやしてたかも?」
「たぶん去年も文化祭に出てないぜ。そんなこと言ってた」
うわ、マジ? ってことはもしかして真田って来年も文化祭に出れないのか?
こんなにしょぼい文化祭でも三年連続で出れないってのはイヤだよな。中学の文化祭の経験無しなんて。
それはかなりカワイソーなんじゃねぇ?
「まぁでも真田はサッカーに懸けてるみたいだし、仕方ないだろ」
渡辺の言葉に、俺は思わず眉をひそめた。



同じクラスの真田。
俺の前の席の真田。
同じ授業を受けて、同じ行事の準備をする真田。
なのにアイツはもう一番大切なことを見つけている。
正直、俺はそんな真田が羨ましいし妬ましい。
こんなの俺の一人勝手だとは知ってるが、でもやっぱ真田を見てると焦る。
頑張れよと思うけど、ズルイとも思ってしまう。



・・・・・・あーあ、俺も早くやりたいこととか見つけないとな。



真田のいない当番表を仕舞って、小さく溜息をついた。
たぶん真田は九州の地でゴールを決めているはずだ。
そうならいいと、思う。





2004年6月30日